研究課題/領域番号 |
20K05592
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
日隈 聡士 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 主任研究員 (70714012)
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研究分担者 |
武市 泰男 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 助教 (40636461)
岩佐 豪 北海道大学, 理学研究院, 助教 (80596685)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 固体触媒 / 窒素固定 / 活性サイト |
研究実績の概要 |
化学製品製造において触媒は不可欠であり、固体触媒を用いる不均一系反応は化成品の連続フロー生産と触媒の回収・再利用が可能であるため『低環境負荷』なプロセスである。しかし、担持触媒等の固体触媒は分子触媒を用いる均一系反応に比べ、安定(不活性)で表面エネルギーが低く、構造が複雑なため反応機構が不明瞭である。加えて、これまで分子触媒については、N2活性化の報告例は多いが、いずれも『NH3合成』を目的としている。一方、固体触媒については、近年日本で『Fe触媒を用いるHaber-Bosch(HB)法』よりも温和条件でN2からNH3を合成するRu触媒の報告例がある。 そこで本研究では、新たなN2変換ならびに固定化反応の開発を検討する。固体触媒の活性サイトを制御して特殊反応場を形成し、N2の強固な三重結合(N≡N)の切断に挑戦する。加えて、フロー反応の流路方向をOperando観察するX線(XAFS)-赤外(FTIR)分光の同時測定システムを開発し、触媒反応中の『触媒の局所構造』と『触媒上の吸着形態』を同時に可視化して特殊反応場の反応機構を詳細に解明する。本研究で得られる成果は、人類の『健康と福祉』を推進する持続可能な開発目標(SDGs)に貢献する技術になる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
化学製品製造において触媒は不可欠であり、固体触媒を用いる不均一系反応は化成品の連続生産と触媒の回収・再利用が可能であるため『低環境負荷』である。本年度では、様々な固体触媒を調製し、窒素化合物を活性化する反応を検討した。 種々の条件のPyruvic acidのアミノ化反応の転化率と選択率を示す。無触媒では反応が進行しなかったが、Ru/Al2O3を用いた場合ではPyruvic acidの転化が確認された。N2/H2(1:3)雰囲気下やNH3水を加えたでは、Pyruvic acidの転化率は約100%を示したがそのほとんどはLactic acidへと変換していた。N2とH2との反応(NH3合成)やPyruvic acidとNH3との反応(アミノ化)より、Pyruvic acid のケトン基とH2が容易に反応していると推察された。次に、H2によるアミノ化の阻害を避けるため、H2を加えない条件でのPyruvic acidとNH3との反応を検討した。0.05 MのNH3水を用いた場合、Pyruvic acid は77%転化していたが、その生成物を特定することができなかった。一方、高濃度の13.4 M NH3水を用いた場合、主にAcetamideの生成(アミノ化)が確認され、NH3濃度の違いにより生成物が異なることが明らかになった。今後はAlanineの正確な定量を行い、Pyruvic acidのケトン基を選択的にアミノ化する反応条件の探索を検討する。
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今後の研究の推進方策 |
引き続きN2固定化反応に活性を示す触媒開発を遂行する。Ru/Al2O3やFe/Al2O3等の実用的な高活性触媒を、工業化されている湿式含浸担持法で調製する。得られた触媒の物性(酸化還元性等)と構造(結晶・局所構造等)をX線回折(XRD)、光電子分光(XPS)、蛍光X線(XRF)測定等から明らかにする。N2吸着で触媒の比表面積(SBET)を調べ、SBETで規格化したN2変換活性(TOF)を算出・比較して活性化の要因を明らかにする。担持貴金属触媒については、COパルス法を用いてナノ粒子の表面の露出割合ならびに分散度の温度依存性を調べる。透過電子顕微鏡(TEM/EDX)を用いてナノ粒子の析出・分散状態を観察する。高分解能が必要な場合はナノテクノロジープラットフォーム事業を利用する。触媒の活性サイトの表面露出割合を高めるのに有効な合成法について、錯体重合法、共沈法等の適用を検討する。組成・焼成温度等の最適化と改良を検討する。XPS測定によって、アミノ化反応後の状態を保持した触媒表面の酸化状態を調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
半導体不足の影響により昨年度機器の納期が未定であったが、次年度問題ないことが各印できたため使用する計画である。
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