研究課題
水素はエネルギー密度が高く燃焼時に水しか排出しないことから低環境負荷のエネルギーとして知られている.現在,水素を安全に運ぶ技術の開発が水素社会実現のために求めらている.ギ酸は水素を4.4wt%含む液体で水溶液にすれば燃焼もしないため,有望な水素キャリアとして注目されている.本研究課題においては,ギ酸の脱水素化(HCOOH→H2 + CO2)による水素発生に有効な触媒の開発を行った.とりわけ,従来の研究のように触媒の高活性化だけではなく,耐久性向上についても検討を行った.また,本研究課題では,環境負荷の大きい有機溶媒を使用せず,水中で触媒活性を示す触媒に限って研究を行った.研究期間を通じて,種々のイリジウム触媒について検討を行ったところ,ピリジンおよびピラゾール部位にそれぞれ電子供与性置換基を有するピリジル-ピラゾール配位子を有するIr触媒が効果的であることが分かった.同触媒は,これまでに開発された触媒の中で最も活性が高いわけではないが,還流条件下で明確な劣化なしに反応を完結させ,高い耐久性を示した.低pHのギ酸水溶液中,かつ,還流条件であったため,新規触媒と違い多くの触媒が高い活性を維持することなく失活した.さらに,新規触媒の存在下,ギ酸溶液を送液してギ酸の脱水素反応を長期間行ったところ,43日間もの間触媒活性を維持し,3.3立方メートルのガスを発生させることができた.現在のところ,水溶液中の反応でこれほど高い耐久性の触媒は他にはないため,当初目的通りの触媒開発に成功した.
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Coordination Chemistry Reviews
巻: 472 ページ: 214767~214767
10.1016/j.ccr.2022.214767