研究課題/領域番号 |
20K05599
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
中野 幸司 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70345099)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | エポキシド / 二酸化炭素 / ポリカルボナート / ブロック共重合体 |
研究実績の概要 |
本研究では,エポキシドと二酸化炭素との交互共重合によって合成できる脂肪族ポリカルボナート(APC)をマクロ開始剤とする重合によって,APCと他の高分子を連結したブロック共重合体の新しい合成法を開発する.また,得られるブロック共重合体の基礎的な力学特性や相分離挙動,相溶化作用を評価し,構造と物性の相関を解明する. 令和2年度は,ブロック共重合体の新規合成法の開発を重点的に実施した.アリルアルコールを連鎖移動剤とするエポキシドと二酸化炭素との交互共重合によって,末端にアリル基を導入したAPCマクロ連鎖移動剤を調製した.得られたAPCマクロ連鎖移動剤存在下でシクロアルケンの開環メタセシス重合をおこなうことで,APCとポリシクロアルケンのブロック共重合体を合成できることを明らかにした.エポキシドとしてプロピレンオキシドやシクロヘキセンオキシド,シクロアルケンとして5-ノルボルネン-2,3-ジカルボキシイミドやシクロオクテンなどが適用可能であった.また,シクロアルケンの仕込み比を変化させることで,ブロック比率を変化させることも可能であった.通常,脂肪族ポリカルボナートの熱分解は,通常250℃付近から始まるが,今回得られたブロック共重合体では熱分解温度が20℃程度向上することがわかった. さらに,上記と同様の方法によって調製した末端にアセタール基をもつAPCマクロ開始剤をもちいることで,ビニルエーテル類のカチオン重合が進行することも明らかにし,対応するブロック共重合体を得ることに成功した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和2年度に予定していた実施項目のうち,「ブロック共重合体の新規合成法の開発」は概ね順調に実施でき,新たに二つの重合形式でブロック共重合体を合成できることを明らかにできた.一方,新型コロナウィルス感染拡大の影響により,研究協力者である研究室所属学生の登校が制限されたため,令和2年度に予定していた「ブロック共重合体の力学特性およびミクロ相分離挙動の評価」に関しては,評価サンプルの合成条件の検討などにとどまった.
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度には以下の項目を実施する. (A)ブロック共重合体の新規合成法の開発:令和2年度に開発した,開環メタセシス重合やカチオン重合を用いたブロック共重合体の合成法に関して,モノマーの適用範囲の拡充やポリシクロアルケン部分の水素化による飽和型ブロック共重合体への変換を検討する. (B)ブロック共重合体の力学特性およびミクロ相分離挙動の評価:令和2年度で準備した,脂肪族ポリカルボナートとビニルポリマーとのブロック共重合体の引張試験をおこない,引張強さや破断ひずみなどを明らかにする.また,走査型・透過型電子顕微鏡観察やX線回折実験により,各ブロック共重合体の相分離構造を確認する. (C)ブロック共重合体の相溶化作用の解明:脂肪族ポリカルボナートとビニルポリマーとのブロック共重合体の相溶化作用を明らかにする.配合比を系統的に変化させて混合し,力学特性測定や各種顕微鏡観察をおこない,相溶化作用を評価する.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染拡大によって研究協力者の研究室所属学生の登校が制限されたことなどにより研究実施に遅延が生じた.また,予定されていた学会もオンラインになるなど計上していた旅費の支出がなくなった.これらの理由により次年度使用額が生じた.令和3年度分として請求した助成金と合わせ,薬品がガラス器具,不活性ガスなどの購入や旅費に充てる.
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