研究課題/領域番号 |
20K05600
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
阪口 壽一 福井大学, 学術研究院工学系部門, 准教授 (60432150)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 高分子膜 / 分離膜 / 二酸化炭素 / 気体透過性 / ポリアセチレン / 気体分離 |
研究実績の概要 |
本研究では、特定物質の分離に適した膜内空間サイズや形状だけでなく、親和性も制御されたポリマーの設計と合成方法を確立し、気体分子のようなサブナノサイズの物質を分離可能とする「先端機能性膜」の創出を目的としている。具体的には、①サブナノ空間を作る方法の確立②サブナノ空間を支える方法の確立③親和性を持たせる方法の確立④それらを統合した先端機能性膜の創出の4段階を検討していく。 本年度は、①サブナノ空間を作る方法の確立を目的として、かさ高い置換基を有するジフェニルアセチレン類の共重合を実施し、置換基の種類、サイズおよび脱離反応後のポリマー膜のサブナノ空間の変化について研究した。 置換基の異なる2種類のジフェニルアセチレンモノマーを共重合することで、それぞれの単独重合体よりも高いガス透過性を示し、サブナノ空間が大きくなることを見出した。フェニル基よりもサイズの大きなナフチル基を含むコポリマーはサブナノ空間が大きく非常に高い気体透過性を示すポリマー膜になることがわかった。さらに、フッ素と塩素原子を含んだジフェニルアセチレンのコポリマー膜は、極めてサブナノ空間が大きくなり、現存する高分子膜の中で最も高い気体透過係数を示すことを見出した。また、側鎖にジフェニルアセチレンを含むジフェニルアセチレンポリマーの合成にも成功し、複数のかさ高い置換基を有するポリマーが得られ、かさ高い置換基の数が増すにつれ、気体透過性が増加することを明らかにした。またこれらのポリマーが強い蛍光発光を示すことから、分離膜材料としてだけでなく発光材料としての可能性も見出した。 今回の成果である「サブナノ空間を作る方法」は、効率よく気体の膜分離を実現するために非常に有用な方法であり、地球温暖化ガスと放射性物質の分離などへの貢献が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究初年度は、コロナ禍により研究活動が一部制限されることもあった中で、計画していた実験は順調に進展し、学術雑誌に掲載される結果も複数出すことができた。初年度の目的である「サブナノ空間を作る方法の確立」という内容はおおむね達成することができたと評価している。
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今後の研究の推進方策 |
「先端機能性膜」の開発に向けて、一つ目の課題はおおむね達成できたため、今後は②サブナノ空間を支える方法の確立と③親和性を持たせる方法の確立を達成に向けて、ポリマー鎖同士をつなげる方法の検討と極性基を導入する方法の検討を行う。 具体的には、化学結合によってポリマーの置換基を反応させる方法を検討するため、ビニル基などの反応性基を有するポリマーを合成する。また、無機微粒子を添加することで物理的相互作用をつかった結合も検討する。 極性基にはイミダゾリウム基を計画し、高分子反応を用いてポリマー鎖に導入する。
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