研究課題/領域番号 |
20K05601
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研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
鈴木 将人 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20179253)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | アシルシラン / アニオン重合 |
研究実績の概要 |
前年の研究結果を受けて、α,β-不飽和アシルシランのカルボニル基への求核攻撃とブルック転移の起こり易さを考え、いくつかのモノマーを新たに設計した。その中で合成に成功したクロトノイルジメチルフェニルシランとシンナモイルトリメチルシランについて、n-BuLiを開始剤とするTHF中でのアニオン重合を検討した。後者のモノマーについては、ケイ素原子転移後の炭素アニオンの電子的な安定化を狙ってベンゼン環のパラ位にフッ素を導入した物とオルト位にシアノ基を導入した物も合成し同様の重合を試みた。しかしながら、何れの場合もポリマーは得られなかった。 ラジカル反応でもブルック転移が起こることが知られているので、メタクリロイルジメチルフェニルシランのラジカル重合を検討した。単独重合が起こらなかったので、スチレンと当モルでの共重合を行った。トルエン中、AIBN(5 mol%)を開始剤として、60℃18時間の反応で数平均分子量4200のポリマーがメタノール不溶部として収率23%で得られた。1H NMR解析によって、メタクリロイルジメチルフェニルシラン由来のユニットが57%含まれていることが判った。反応混合物の29Si NMRを測定したところ、多くは通常のビニル重合体由来のアシルシラン構造のシグナルが観測されたが、ブルック転移後のシリルエノールエーテル骨格が加水分解して生成するジメチルフェニルシラノール由来のシグナルが検出された。現在、転移反応の頻度に及ぼす重合温度や溶媒の影響、共重合モノマーの効果について検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
設計した重合が進行しないため、モノマーの構造を練り直し精力的にモノマー合成を行ったが、予想に反してその合成自体が困難であった。 合成に成功した新規モノマーについて、重合を検討したものの期待した機構でのアニオン重合は起こらなかった。
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今後の研究の推進方策 |
新たなモノマーの合成の検討を引き続き行う。 29Si NMRを駆使して、得られたポリマーの構造解析を行う。 ラジカル重合でのブルック転移を検討する。 有機銅を開始剤とする重合を検討し、目的の重合反応の達成を目指す。 得られたポ リマーの高分子反応を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
手持ちの示差熱・熱重量同時測定装置が故障し修理不能になったため、別の予算と合算して装置を更新した。予定の変更により、予算の差額が生じ一部が年度繰り越しとなった。
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