研究課題
以下について検討し、明らかにした。1.疑似βグルカンの合成のために、βグルカン4糖オリゴ糖モノマーを用いて、ノルボルネンと開環メタセシス重合を行い、糖の含有率が異なる高分子を得た。更に高分子主鎖に残っている二重結合を、水素添加反応またはジヒドロキシ化反応によって修飾を行い、異なる構造の高分子を合成した。2.水晶振動子マイクロバランス法を用いて、合成した高分子とDectin-1の結合親和性評価を行った。水晶振動子の金基板上にDctin-1を固定化した後、高分子を添加しながら、重量変化を観測した。その結果、糖モノマーのみからなる単重合の高分子ではDectin-1との結合が観測されず、糖モノマーとノルボルネンの比が1:3.5であり、ジヒドロキシ化した高分子が最も高い親和性を示した。またその親和性は、天然のβグルカンであるシゾフィランと同等の解離定数となった。3.マウスのマクロファージ細胞RAW264に対して、合成した高分子を添加することにより、産生されるサイトカインTNF-αとIL-6、IL-1βの量を、ELISAを用いて定量した。その結果、高分子主鎖が未修飾または水素添加した糖とノルボルネンの比が1:3.5の高分子がTNF-αの産生を高く誘導し、シゾフィランよりも高い結果となった。またIL-6、IL-1βについては、高分子主鎖が未修飾である糖とノルボルネンの比が1:3.5の高分子が高い誘導能を示した。疎水的な高分子がサイトカインの誘導を促す結果となった。以上の結果から天然のβグルカンであるシゾフィランを超える分子を創製することができた。またDectin-1との結合能とサイトカイン誘導能には、相関性がないことが明らかになり、結合するだけでは免疫細胞を活性化できないことが明らかとなった。
すべて 2023 2022 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 3件、 招待講演 3件) 備考 (1件)
Journal of Polymer Science
巻: 61 ページ: 277-288
10.1002/pol.20220540
Journal of Biomaterials Science, Polymer Edition
巻: 33 ページ: 299-312
10.1080/09205063.2021.1985243
Tetrahedron Letters
巻: 103 ページ: 153995
10.1016/j.tetlet.2022.153995
http://www.ach.nitech.ac.jp/~organic/yamamura/toppage.html