PLA樹脂の酸化度制御:研究期間内において、PLAのフィルムに対し光活性化二酸化塩素改質処理を行い、①改質PLAの作製、②トルイジンブルー染色法による導入カルボキシ基の定量、③酸化条件に応じた酸化度制御を達成した。 さらに3Dプリンタを用いて作製した多孔質の3次元構造体への酸化処理と、トルイジンブルー染色による酸化度評価から、構造体の内部まで染色され、酸化が進行していることが明らかになった。構造体内部まで処理が可能であることから、細胞足場材料としての応用への期待が高まったと言える。 細胞接着性評価:フィルム状の二酸化塩素光酸化改質PLA材料を用いた細胞培養を検討した。マウス線維芽細胞を用いて、細胞播種から一定時間後の細胞を化学固定化し位相差顕微鏡を用いた観察により細胞数をカウントした。また、生細胞数測定試薬WST-8を用いた細胞数測定も併せて行った。何れの結果からも未処理品と比較して、二酸化塩素光酸化改質処理を行ったサンプルにおいて細胞数が優位に増加し、一般的な表面処理であるプラズマ処理品と同程度まで細胞接着性が向上した。ガス状の二酸化塩素を用いた改質においても細胞接着性の向上が見られたことから、複雑な形状を有する構造体においても適用可能と考えられる。 分解性評価:60℃に加熱した重水中での粉体PLAの分解性をNMRから評価した。加水分解により生成した乳酸のシグナルを追跡したところ、酸化サンプルにおいて分解速度の向上が見られた。一方で、酸化度と分解速度との相関がみられなかったことから更なる検討が必要と考えられる。
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