本研究では、有機溶媒であるジメチルスルホキシド(DMSO)を含んだ高分子ネットワーク材料であるオルガノゲル間をトリチオカルバマートを架橋部として、化学反応によってトリチオカルバマートを形成させて、ネットワーク間を結びつけることによって接着する「オルガノゲルの接着システム」を開発した。このような手法によって得られたゲル接着部は、接着に用いたトリチオカルバマート架橋部から高分子を成長させることのできる。そこで、接着したオルガノゲルに高分子原料であるN-イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)を添加し、ラジカル重合によって合成した。その結果、オルガノゲル同士を繋ぎ合わせている架橋部であるトリチオカルバマート部から、NIPAMが多数連結された高分子であるポリNIPAMを成長させることに成功した。 このような実験の結果として得られたオルガノゲルの接着部を水に浸し、溶媒をDMSOから水へと置換することでヒドロゲルの接着体へと変換した。このヒドロゲル接着体を温度50℃まで加熱したところ、接着力が増大する温度応答性を示した。これはトリチオカルバマート架橋部から成長したポリNIPAMが人間の体温付近である35度近辺で下限臨界溶液温度(LCST)を示し、水に不溶になるため、架橋部が凝集し、その凝集力で接着力が増大したものであると考えられる。 以上の本研究で得られた研究成果を学術論文としてアメリカ化学会(ACS)の論文誌である「ACS Applied Polymer Materials」に発表することに成功した。
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