熱可塑性ポリウレタン(PU)とイオン液体(IL)のEMI-TFSIを混合したイオンゲル(IL-PU)の両面に導電性高分子であるPEDOT:PSSを塗布することで、IL-PU/PEDOT:PSSフィルムを作製した。5×15 mmに切り出したフィルムをPETフィルムの上に乗せ、一端5 mmを金電極で挟み、もう一端を圧縮試験機で押し下げた。様々な速度と変位で屈曲させたときの発生電荷と電圧をデータロガーで収集し、PCに取り込んでセンサ特性を解析した。興味深いことに、屈曲変位は電圧、速度は電荷と強い相関を示すことから、一つのセンサで異なる物理量を計測可能なマルチセンサであることがわかった。屈曲変位の増大とともに発生電圧も上昇し、目標(5 mV)の2倍以上である11.2 mVを得ることに成功した。より詳細なメカニズムを検討するため、厚さ100~500 μmのイオンゲルを用いてフレキシブルセンサを作製した。発生電圧と電荷は膜厚の増加とともに上昇することから、ピエゾイオン効果で説明できることがわかった。すなわち、イオンゲルを屈曲させることで両面にひずみ差が生じ、輸率の大きいEMIカチオンが先に移動することで正の電荷(Q+)を発生する。次に、輸率の小さいTFSIアニオンが遅れて移動することから負の電荷(Q-)を生じる。このとき、カチオンとアニオンの移動に伴う電荷の総和が等しくなければ、屈曲状態においてΔQ(= Q+ + Q-)の電荷が残ることになり、これが電圧発生のメカニズムであることを明らかにした。さらに、同じセンサを二つ並べたセンサアレイを手首に貼り付けたウェアラブルセンサを作製した。手首を上下に振ると、正および負の電圧と電荷を発生することから、変位と速度だけでなく、屈曲方向を同時に検出可能なウェアラブルマルチセンサとして動作することを実証した。
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