研究課題/領域番号 |
20K05618
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
金山 直樹 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 主任研究員 (80377811)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | DNAブラシ / 末端構造 / スタッキング相互作用 / 光ピンセット / ブラシ間力 |
研究実績の概要 |
本課題は、ブラシ状に集積したオリゴDNA鎖(以下、DNAブラシ)において明らかになりつつあるDNA二重鎖間の末端構造選択的なスタッキング促進現象に基づき、サンプルDNAにおける末端リン酸化状態に応じて明瞭な色変化を示す呈色システムの新原理の確立を目的としている。本年度は昨年度に引き続き、直径2マイクロ・メートルのラテックス粒子表面に形成させたDNAブラシを対象に、DNA二重鎖末端間におけるスタッキング促進現象の解明に取り組んだ。昨年度までの検討において、DNAブラシを構成する一本鎖オリゴDNA鎖が平滑末端構造の二重鎖となるよう配列設計した相補鎖を添加し、さらに溶液(分散媒)の塩濃度を高めた場合に、DNAブラシ間に引力的な相互作用が生じることを光ピンセット法に基づく粒子間力計測から明らかにした。改めて、当該条件におけるDNAブラシの二重鎖形成率を蛍光ラベル法により評価したところ、僅か数パーセント程度に留まり、一本鎖と二重鎖が混在したDNAブラシであることがわかった。そこで、二重鎖構造のDNA鎖のみから構成されるDNAブラシ間での相互作用を評価するため、ステム・ループ型の安定な自己構造をとるオリゴDNA配列を設計し、ループ部位に導入したリンカーを介してラテックス粒子表面に密に化学固定することでステム部位の二重鎖のみで構成される完全二重鎖DNAブラシを得ることに成功した。完全二重鎖DNAブラシにおいても、最表層(末端構造)が平滑末端であるDNAブラシ間でのみ、溶液の塩濃度の上昇に伴って引力的な相互作用が生じる末端構造選択性を確認し、DNA二重鎖の末端間のスタッキング相互作用が選択的に促進されていることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
R3年度から研究代表者が所属機関を異動し、研究環境の再整備に想定以上の時間を要したものの、本課題のベースとなるDNAブラシ間の末端構造選択的なスタッキング促進現象に関して、DNA末端リン酸化プローブの設計指針に繋がる基本的な知見をまとめ誌上発表した。
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今後の研究の推進方策 |
本課題を遂行するために必要な分析機器のセットアップを可能な限り早期に実施し、予定していた項目の検討を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
R3年度より研究代表者が所属機関を異動し、それに伴なう分析装置類の移管手続きが完了するまでに想定以上の時間がかかった。当該装置を使用した検討内容は、本年度内に実施することが時間的に難しくなったため、研究計画の一部を変更する必要が生じた。次年度への繰越金は、移管手続きが完了した分析装置のセットアップに使用する計画である。
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