研究課題/領域番号 |
20K05626
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
後藤 博正 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (40292528)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 磁性 / 液晶 / 高分子合成 |
研究実績の概要 |
光学活性でヘリカル構造をもつ高分子をキラルなコレステリック液晶を電解液とし、ここで電解重合を行うことにより、アキラルなモノマーからキラルな高分子を得る手法(液晶電解不斉重合)とキラルな液晶溶媒中で高分子合成を行う手法(液晶溶媒不斉重合)の2つのキラル転写重合法により安定ラジカルをもつ共役系高分子を合成し、光学活性な置換基をもたない一方で、キラルなπスタッキングによる構造型キラリティーをもつ高分子を合成した。キラル溶媒中での安定ラジカルをもつポリマーの触媒による化学合成を行うために、キラルなコレステリック相を示す液晶を作成した。化学重合では液晶中で合成を行うための最適条件(攪拌速度、温度範囲)を確認した。モノマーはポリチオフェン骨格と、側鎖に安定なラジカル前駆体をもつフェニレン誘導体を用いた。重合反応はキラルな液晶を反応溶媒として、ここでStille反応を用いて液晶転写型ヘリカルポリマーを合成した。まず、安定ラジカル前駆体および光学活性置換基を側鎖にもつモノマーの合成を行った。次に液晶電解液の作成と液晶電解液中での電解重合を行い、この磁気的な挙動をMPMS (SQUID, 超伝導量子干渉計)により測定した。この高分子は、側鎖にスピン源となるラジカルをもち、高分子主鎖の集合体がヘリカルならせん構造をもつために、ヘリカル磁性を示す。この合成と磁気的な評価を行った。 得られたポリマーは赤外線吸収スペクトル (IR)、核磁気共鳴スペクトル (NMR)および質量分析(MALDI-TOF-MASS)測定を行い、分子構造を確認した。 特に今年度、汎用のネマチック液晶に天然物由来のキラル添加剤を加え、簡便にコレステリック液晶を作成する方法を見出した。これを液晶性溶媒として、光学活性な高分子を得ることができた。このことをもとに次年度からの液晶中での高分子合成の適切な条件設定を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
液晶中での高分子合成は良好に進行している。また天然物由来の光学活性化合物のキラルドーパントとしての利用が有効であることが分かった。一方で、ポリエン型のキラル化合物はらせん誘起力が弱く、らせんピッチの小さなヘリカル構造をもつ高分子の合成には用いることが難しいことと、得られた高分子の指紋状構造が分子レベルからの転写を必ずしも反映していない可能性のあることが分かった。
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今後の研究の推進方策 |
キラルな液晶溶媒としてのコレステリック液晶を簡便・大量に合成する方法に取り組むことと、天然系あるいは半合成系のコレステリック液晶溶媒の開発を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルスにより、学外発表活動に制限があったことと、研究室がコロナの状況により一時的に実験を停止せざるを得ない状況に陥ったため。しかし、年度末近くに新しい知見を見出し、これをきっかけにキラル高分子の新しい進展が見えた。2021年度は試薬の購入および低温寒剤を使用し、研究を進める。
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