研究課題/領域番号 |
20K05628
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研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
小久保 尚 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 特別研究教員 (80397091)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | π共役高分子 / ブロック共重合体 / イオン液体 / イオンゲル / 電子・イオン混合伝導体 |
研究実績の概要 |
本研究は汎用高分子と電気化学・光機能を有するπ共役高分子から成るブロック共重合体を合成し、イオン液体と組み合わせることで新たな機能を有するソフトマテリアルの創製を目指している。 汎用高分子としてポリ(エチレンオキシド)(PEO)、π共役高分子としてポリ(3-ヘキシルチオフェン)(P3HT)を選択し、P3HT-PEO-P3HTトリブロック共重合体を合成した。片末端がエチニル基であるP3HTを精密に合成し、両末端にアジド基を有するPEOを合成した。これらを銅触媒存在下で反応させることで目的のトリブロック共重合体を得た。そしてTHFを共溶媒として得られたトリブロック共重合体を1-エチル-3-メチルイミダゾリウム ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)アミド([C2mim][NTf2])に溶解させた。共溶媒を揮発させることでイオンゲルを得ることに成功した。 イオン液体含有量の増大に伴い、PEOの結晶化度の低下を観測した。これはイオン液体がPEOに選択的に様ばいわしていることを示唆している。レオロジー測定より、PEO, P3HT由来の融点近傍で、貯蔵弾性率の大きな変化を観測した。 得られたトリブロック共重合体は未ドープ状態ではイオン伝導性を有したが、ヨウ素ドーピングを施すと導電率が2桁以上向上し、電子伝導性が付与されたことを確認した。このような電子・イオン混合伝導性ゲルに関する報告は少なく、今後電池用電極材料などへの適用が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
片末端のみにエチニル基を有するP3HTの合成が本研究の進捗のポイントになるが、合成条件を精査することで、それが可能となった。GPC測定より、エチニル基/アジド基の付加反応(Huisgen環化付加反応)は、2日程度で完了したことが確認され、得られたトリブロック共重合体の分子量分布(Mw/Mn)は1.2程度と狭く単分散性が高かった。P3HTやPEOの分子量を変更することで、全体に占めるP3HTの割合が異なる3種類のトリブロック共重合体を合成した。イオン液体を含まない高分子バルクの基礎データを収集した。 代表的なイオン液体である[C2mim][NTf2]と組み合わせることでイオンゲルを作製し、その熱物性、電気化学物性など基礎データを蓄積でした。 以上より、進捗状況は概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
申請者のグループで行っているAFMによるイオンゲルのミクロ相分離構造の観察を検討している。現状では顕著なミクロ相分離構造の観察には至っていないが、ミクロ相分離構造と電気化学物性や力学物性の相関関係を整理するつもりである。 また得られたイオンゲル2枚を電解質膜で挟むことでイオンゲルアクチュエータの作製にも取り組むつもりである。申請者のグループで検討してきたイオンゲルアクチュエータは電気二重層キャパシタ構造を有しており、応答速度や変位量の限界に達していた。今回の作製を計画しているアクチュエータは電気化学ドーピングを利用するため、変位量が増大することが期待される。
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