研究課題/領域番号 |
20K05630
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
渡邊 真志 信州大学, 学術研究院繊維学系, 教授 (90301209)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | シワ / 座屈不安定性 / 針状結晶 |
研究実績の概要 |
有機半導体の針状結晶を電子素子の構成要素として利用する場合、1本1本を所望の位置、向きに配置しなければならない。本研究ではポリジメチルシロキサン製ゴム板の表面に、多数の針状結晶を、方向、間隔、長さを揃えて並べる技術を開発する。この技術では(1) 座屈不安定性により規則的なシワを形成させ、(2) そこに液滴を形成させ、(3) 乾かして結晶を得る。既に報告したようにアントラキノンの場合、針状結晶の配列に成功した。しかし、他の化合物では実現できていない。その原因は上記3段階を一つの工程にまとめているため、適切な条件を見出しにくく、また、各段階で起きている現象の理解が不十分なことである。そこで本年度は各段階を別々の工程にする所から始めた。 第一段階のシワ形成であるが、これはポリジメチルシロキサン表面の酸化層が溶媒で膨潤することにより引き起こされる。細かな条件検討ができるよう2種の溶媒を混合し、その比率で性質を変えられるようにした。その結果、膨潤により表面に生じる凹凸(窪み、シワ)の制御が再現性良くできるようになった。この凹凸は乾燥すると消えてしまう問題があったが、ある種の触媒で酸化層内の架橋反応を促進することにより、凹凸形成の履歴を固定することができた。第二段階の液滴形成についても種々の混合溶媒を検討した。その結果、溶媒がポリジメチルシロキサン表面の酸化層を膨潤させること、および、特定の範囲の表面張力を持つことが必要なことが明らかとなった。これにより液滴形成のメカニズムについてもある程度具体的に推定できるようになった。第三段階の結晶析出についてこれまでの所で分かったことは、化合物によっては酸化層に吸収されてしまい表面で結晶化しないことである。この問題の解決法として液滴をガラス板に転写する方法を検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で針状結晶を並べる方法は3段階から成っており、2段階目までは実験条件の最適化の指針やメカニズムについての知見の蓄積ができた。現在、3段階目について検討している所なので、概ね順調であると言える。また、ここまでの知見をまとめた論文を投稿し、現在、査読の結果を待っている所である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で針状結晶を並べる方法は3段階から成っており、2段階目まではおよその検討が済んだ。今後は3段目についての検討になるが、既に取り掛かっており、針状結晶を形成させようとする化合物が、ポリジメチルシロキサンの酸化層に吸収されてしまうというやや予想外の問題が明らかとなったが、これに対する解決策もある程度考えられているので、その方向で進める。この問題が解決したのちは、結晶の生成を蛍光顕微鏡で経時的に観察し、どのような過程で生成するのかを明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍で学会発表のための出張がなく、旅費を使わなかった。これの使用計画としては、蛍光顕微鏡使用時に部屋の照明が邪魔になることが分かったので、暗幕の購入が必要になったことから、これの購入に使用する。
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