• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2022 年度 実施状況報告書

部分重水素化コントラスト変調法を用いた高分子ゲルの構造解析

研究課題

研究課題/領域番号 20K05635
研究機関国立研究開発法人日本原子力研究開発機構

研究代表者

高田 慎一  国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 J-PARCセンター, 研究副主幹 (70435600)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2024-03-31
キーワード高分子ゲル / 中性子小角散乱 / NIPA
研究実績の概要

本研究では、高分子ゲルの「主鎖」及び「側鎖」の各部位が構築する構造を明らかにし、高分子ゲルの構造不均一性の発現メカニズム、体積相転移時の各部位の役割、さらに水分子と側鎖の相互作用などを解明することが目的である。
令和4年度は、側鎖(イソプロピル基)を部分重水素化したN-イソプロピルアクリルアミド(NIPAd7)ゲルと、比較として、通常のH体のNIPAゲルを調製し、J-PARC物質・生命科学実験施設の小角・広角中性子散乱測定装置(BL15大観)を用いて、温度変化による高分子ゲルの構造解析を実施した。その結果、NIPAゲルはよく知られているように、転移温度(T=35℃)付近において、疎水性側鎖の凝集構造の影響により、低q領域の散乱強度が急激に増大し、散乱強度プロファイルから得られる相関長が転移温度付近で発散するような臨界点を示す挙動が観測された。一方、NIPAd7ゲルは、転移温度付近では散乱強度プロファイルに変化は見られず、さらに温度を上昇させると、42℃付近において散乱強度の増大が見られたが、散乱長の臨界点的な挙動は見られなかった。本測定では、溶媒に重水を用いることで、NIPAゲルは系全体(主鎖と側鎖)、NIPAd7ゲルは溶媒と重水素化側鎖の散乱長密度が近くなることから、主鎖部分の挙動を反映した結果が得られている。このことから、両ゲルの散乱強度プロファイルの温度変化は、側鎖と主鎖の挙動の変化を示しており、臨界点付近において、相関長の発散が観測される挙動は、側鎖の凝集構造の影響を強く反映していることが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

部分重水素化した高分子ゲルを用いることで、当初の目的である高分子ゲルの「主鎖」及び「側鎖」の転移温度付近での散乱プロファイルの変化を測定し、ゲルの構造不均一性の発現メカニズムの解明のための知見を得ることができた。計画では、高分子ゲルのアブノーマルバタフライパターン現象の要因解明のため、延伸状態による高分子ゲルの構造解析を計画していたが、必要な延伸装置の検討が遅くなり、整備がおくれている。以上のことから、やや遅れていると判断した。

今後の研究の推進方策

令和5年度は、延伸装置の整備を進め、NIPAゲルと部分重水素化されたNIPAd7ゲルを、延伸環境下で中性子小角散乱測定を実施することで、延伸により高分子ゲルの「主鎖」及び「側鎖」が構築する構造を明らかにすることで、高分子ゲルのアブノーマル・バタフライパターン現象の要因について明らかにしたい。

次年度使用額が生じた理由

令和4年度後半に、延伸下でのin-stu中性子小角散乱測定を実施する計画だったが、測定に使用する延伸装置について、検討の必要が生じたことやモーター等の使用部品の納入遅延も発生したため、計画どおりに装置を製作するまでには至らず、装置製作や部品購入に係る費用が次年度使用額として生じることとなった。次年度使用額は、小型引張試験機の購入に係る費用として使用する。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2023 2022

すべて 学会発表 (3件)

  • [学会発表] 中性子小角・広角散乱装置BL15大観の現状2023

    • 著者名/発表者名
      高田慎一
    • 学会等名
      中性子小角散乱研究会
  • [学会発表] 湿度制御in-situ SANS測定による高分子電解質膜の構造解析2023

    • 著者名/発表者名
      高田慎一、有馬 寛、廣井 孝介
    • 学会等名
      第72回高分子学会年次大会
  • [学会発表] J-PARCパルス中性子小角散乱装置(BL15大観)の調湿測定システムを使用した高分子電解質膜の構造解析2022

    • 著者名/発表者名
      高田慎一、岩瀬裕希、有馬寛、廣井孝介、森川利明
    • 学会等名
      第73回コロイドおよび界面化学討論会

URL: 

公開日: 2023-12-25  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi