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2020 年度 実施状況報告書

zwitterion構造を持つポリペプチドによるセルロースの可塑化と複合体形成

研究課題

研究課題/領域番号 20K05636
研究機関京都大学

研究代表者

土屋 康佑  京都大学, 工学研究科, 特定准教授 (40451984)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワードポリペプチド / 双性イオン / セルロース / 酵素
研究実績の概要

本申請課題では、セルロースの水素結合を切断することが可能なzwitterion構造を有する機能性ポリペプチドの分子設計および合成を行い、セルロースと特異的に相互作用して可塑化することが可能な新規zwitterion型機能性ポリペプチドの合成を行うことを目的としている。また、合成したポリペプチドを用いて、セルロース結晶との相互作用を解析し、セルロース結晶形態を制御することでセルロース複合材料の創製を行う。本年度は、化学酵素重合法を用いて、zwitterion構造を導入した様々なアミノ酸配列を持つポリペプチドの合成を行った。イミダゾリウム型のzwitterion構造を持つポリペプチドとしてGlyHis、GlyHisGly、GlyHisGluなどの反復配列を持つポリペプチドを化学酵素重合により合成し、ヒスチジンの側鎖をアルキル化およびアシル化することで目的のポリペプチドを得た。アシル化によるzwitterion構造への変換は転化率が55%程度であったが、アルキル化によるzwitterion構造への変換を行うことで90%以上の転化率が得られており、zwitterion構造の導入量を制御することが可能であった。合成したGlyHisGly配列を持つzwitterion型ポリペプチドをセルロース微結晶へ作用させると、原子間力顕微鏡により結晶束がより細かい結晶へ解離する様子が観察された。また、ポリペプチド処理後にセルロース結晶表面の弾性率が向上しており、広角X線散乱解析の結果から結晶構造の変化は見られなかったことから、ポリペプチドにより結晶表面の非晶層がポリペプチド処理により除去されていることが示唆された。また、物細胞にポリペプチドを作用させたところ、培養細胞に限定的ではあるもののセルロースネットワークがほぐれて大きな空孔が形成される様子が観察された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度は、酵素を用いた化学酵素合成によって様々な一次構造を有するzwitterion型ポリペプチドの合成に注力し、ヒスチジンを含んだ繰り返し配列をもつ複数のポリペプチド合成に成功している。プロトタイプであるGlyHisGlyの反復配列からなるzwitterion型ポリペプチドを用いて、in vitroおよびin vivoにおけるセルロース結晶との相互作用について解析を行ったところ、セルロース結晶構造を変えることなく微細な結晶へ解離する効果を見出しており、論文として発表した。また、ヒスチジンを含むポリペプチドの合成において、モノマーの配列やヒスチジン残基に導入した置換基の違いが得られるポリペプチドの重合度や二次構造へ大きく影響を与えることを見出しており、化学酵素重合を利用したポリペプチド合成に関する重要な知見を得た。この成果についても今後論文として発表する予定である。以上の成果から、最終目標であるポリペプチドを用いたセルロース複合材料の創製に向けて順調に研究が進捗していると考えられる。

今後の研究の推進方策

これまでに合成したzwitterion型ポリペプチドを用いて、植物細胞内のセルロースネットワークを解離する効果を見出しているが、植物培養細胞に限定的であり植物組織体への効果はまだ確認されていない。この理由として用いたポリペプチドのzwitterion構造の含有量が55%程度であり、水素結合を介してセルロースと効果的に相互作用できていないことが考えられる。そこで、今後はzwitterion構造の導入量を向上した種々のポリペプチドを用いてセルロース結晶への影響を調べることで、効果的にセルロース結晶を解離する性能を示すポリペプチド構造の最適化を行う。特に、これまでに同程度のzwitterion含有量であっても配列の違いにより異なる二次構造を示すポリペプチドが合成できており、二次構造の違いがセルロースとの相互作用に与える影響についても明らかにしていく。また、イミダゾリウム型以外のzwitterion構造を持つポリペプチドの合成も行い、セルロース結晶に与える影響を調べる予定である。

次年度使用額が生じた理由

コロナウィルスの蔓延により、学会などの出張旅費が必要なくなった。また、年度途中で京都大学へ異動があったため、備品に計上していた物品を購入する必要がなくなった。翌年度へ繰り越した助成金は研究の迅速化を図るため、合成と材料評価に必要となる試薬および消耗品類の購入に充てる予定である。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2020

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件) 図書 (1件) 産業財産権 (1件)

  • [雑誌論文] Zwitterionic Polypeptides: Chemoenzymatic Synthesis and Loosening Function for Cellulose Crystals2020

    • 著者名/発表者名
      Kousuke Tsuchiya, Neval Yilmaz, Takaaki Miyamoto, Hiroyasu Masunaga, Keiji Numata
    • 雑誌名

      Biomacromolecules

      巻: 21 ページ: 1785-1794

    • DOI

      10.1021/acs.biomac.9b01700

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Chemoenzymatic polymerization using proteases for synthesis of functional polypeptides with periodic sequences2020

    • 著者名/発表者名
      K. Tsuchiya, J. Gimenez-Dejoz, K. Terada, P. G. Gudeangadi, K. Numata
    • 学会等名
      ACS National Meeting
    • 国際学会
  • [学会発表] zwitterion構造を有するポリペプチドによる植物細胞壁の過疎化作用2020

    • 著者名/発表者名
      土屋康佑、宮本昂明、Neval Yilmaz、沼田圭司
    • 学会等名
      第30回バイオ・高分子シンポジウム
  • [学会発表] 化学酵素重合を利用した繰り返し配列を持つ機能性ポリペプチドの合成2020

    • 著者名/発表者名
      土屋康佑、沼田圭司
    • 学会等名
      第69回高分子討論会
  • [学会発表] 酵素重合を利用したzwitterion構造を有するポリペプチドの合成2020

    • 著者名/発表者名
      土屋康佑、沼田圭司
    • 学会等名
      2020年繊維学会秋季研究発表会
  • [図書] 生分解性、バイオマスプラスチックの開発と応用2020

    • 著者名/発表者名
      土屋康佑
    • 総ページ数
      560
    • 出版者
      技術情報協会
    • ISBN
      978-4-86104-782-4
  • [産業財産権] バイオマス材料処理剤およびバイオマス材料の処理方法2020

    • 発明者名
      沼田圭司、土屋康佑
    • 権利者名
      沼田圭司、土屋康佑
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      特願2020-049180

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公開日: 2021-12-27  

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