本研究では昆虫の外骨格を形成する高弾性タンパク質である「レジリン」をモデルとした人工ポリペプチドの創製に取り組んだ。レジリンの代表的な繰り返しアミノ酸配列として知られる、キイロショウジョウバエ由来レジリンのExon Iドメインの配列(GGRPSDSYGAPGGGN:EIと略記)、およびガンビエハマダラカ由来レジリンの配列(AQTPSSQYGAP:Agと略記)に焦点を当て、遺伝子工学的手法を利用して大腸菌発現系により、これらの配列が合計32回繰り返し連結した分子量4万前後の3種類のポリペプチドを得た。具体的にはAg配列が連続して32回繰り返されたポリペプチド(Ag32)、N末端側からAg配列が16回、EI配列が16回繰り返してブロック共重合体状に連結したハイブリッドポリペプチド(AG16+EI16)、およびその逆の繰り返し配列を持つポリペプチド(EI16+Ag16)の3種を選定した。 今年度は得られたポリペプチドの水溶液からキャストフィルムおよびハイドロゲルの作製とその物性評価に取り組んだ。前年度に見出したポリペプチドの酸化カップリング反応条件(尿素水溶液中、シトクロムc触媒)に加えて、中性緩衝液中や有機溶媒を含む条件での反応や西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)を触媒とした反応条件の検討を進めた。また、選定した3種のポリペプチドについて反応を行い、分子構造(アミノ酸配列)の違いによる酸化カップリング効率について検証を試みた。得られたフィルム・ゲルについて引張・圧縮試験による力学物性の比較に取り組んだ。
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