研究実績の概要 |
ペロブスカイト量子ドットは半値幅の狭いシャープな発光スペクトルを示すことから、高精細なディスプレイ製品に応用することができる。本年度では、配位子置換や金属塩ドープによる青色ペロブスカイト量子ドットの開発、二次成長法を利用した極めて高い分散安定性を有するナノ結晶の開発を実施した。 1.剛直な骨格のアミン系二座配位子を用いた青色ペロブスカイト量子ドットLED:既存の長鎖アルキル配位子とは異なるアダマンタンジアミンを量子ドット表面に被覆することで、置換前よりも2倍の発光量子収率を示し、純青色領域で世界最高水準の外部量子効率 1.1%を達成した (Adv. Opt. Mater. 2020, 8, 2000289.)。 2.金属塩ドープを利用した鉛置換技術の開発とLED応用: 現状のペロブスカイト量子ドットには特定有害物質である鉛が含まれており、低毒性元素を利用した環境調和型ナノ結晶の開発が強く望まれている。そこで、鉛と同程度のイオン半径を有するランタノイド系元素に着目し、鉛置換を検証した。合成した量子ドットに塩化ネオジムを加え、トルエン中室温下で撹拌することで、5%の置換率と発光量子収率の向上に成功した (ACS Appl. Mater. Interfaces 2020, 12, 53891.)。 3.ナノ結晶の二次成長法による分散安定性とLED特性の両立:ペロブスカイト量子ドットは、表面配位子により分散安定性が大きく影響を受けることが知られている。通常、配位子の密度を下げることで、数時間程度で量子ドットが析出し、分散安定性が低くなる。本研究では、合成した量子ドットに再度前駆体を加え、比較的温和な条件で撹拌することで、二次成長することで、6ヶ月以上の高い分散安定性を示すことを明らかにした( ACS Appl. Mater. Interfaces 2020, 12, 45574.)。
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