研究課題
深いLUMOレベルを有する棒状分子としてクリセン構造に窒素原子を複数導入したイソキノイソキノリン(IQIQ)骨格やジベンゾナフチリジン(DBN)骨格にアルキル鎖を導入した液晶性有機半導体を用いたNチャネルトランジスタの研究を行った。これらのLUMOレベル(-3.3eV)への電荷注入が通常の電極からは不十分であるため、低仕事関数のCa(-2.9eV)を電極としたボトムゲート・トップコンタクト構造のトランジスタを作製した。Caは大気中では不安定であるため、グローブボックスに接続した抵抗加熱真空蒸着器を作製し、大気に暴露せずトランジスタ特性を評価したが、Nチャネル動作の有機トランジスタの実現には至らなかった。アルキル鎖が4本の液晶性ペリレンジイミド誘導体の有機トランジスタをCa電極で作製したところ、Nチャネル動作をしておりCa電極には問題がなかった。Ca電極とIQIQ誘導体やDBN誘導体の接触後は、界面で電気二重層が形成され電荷注入を阻害する方向にエネルギーレベルのシフトが起き、注入障壁が生じた点や、ゲート絶縁膜界面のトラップにより動作がしなかったことが考えられる。また、電荷移動錯体を用いたNチャネル有機トランジスタでは、液晶性ジアルキルBTBT誘導体から液晶性Ph-BTBT誘導体に材料を拡張した。Ph-BTBT誘導体の液晶相由来のモノレイヤー結晶構造に対応する多結晶薄膜において、熱によるアクセプタ分子の拡散により、電荷移動錯体を形成しNチャネル動作し、移動度は10-3cm2/Vsに達した。一方、液晶性Ph-BTBT誘導体の安定な結晶構造であるバイレイヤー結晶構造では、Nチャネル動作せず、電荷移動錯体の形成に液晶相由来の結晶構造が必須であることが明らかになった。このようにNチャネル有機トランジスタの形成には液晶材料の利用が有用であると結論づけられた。
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Applied Physics Express
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physica status solidi (a)
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