研究課題/領域番号 |
20K05645
|
研究機関 | 横浜国立大学 |
研究代表者 |
伊藤 傑 横浜国立大学, 大学院工学研究院, 准教授 (80724418)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | メカノクロミズム / 有機結晶 / 固体発光 / 自己回復材料 |
研究実績の概要 |
摩擦や圧迫などの機械的刺激に応答して光励起時の発光色が変化するメカノクロミック発光材料は、高精細な圧力センサーやウェアラブル端末などへの応用が期待されているが、多くの場合、発光色を元に戻すために加熱や有機溶媒の曝露などが必要となる。本研究は、分子間エネルギー移動を制御可能な二成分系色素を用い、機械的刺激付与後に迅速に形状回復する結晶材料や高分子ゲル材料を創製することにより、機械的刺激を加えている間のみ発光色が変化する高速メカノクロミック発光を実現することを目的としている。令和2年度の研究では、機械的刺激付与後の非晶質状態における分子運動性を高める目的で、鎖長の異なるアルキルアミド鎖やエチレングリコール鎖を導入したフェニルピレン誘導体を合成した。各種誘導体は結晶または油状物質として得られ、ピレンのエキシマー発光に由来する青緑色発光を良好な発光量子収率で示した。結晶性の誘導体に機械的刺激を加えると、多くの場合、発光色の有意な変化が見られたが、発光色の回復には加熱を要した。そこで、結晶および油状物質として得られた二種類のピレン誘導体を混合したところ、自己回復性メカノクロミック発光を示すことを見出した。また、分子間エネルギー移動を制御可能な二成分系色素を調製したところ、機械的刺激により段階的に発光色が変化するメカノクロミック発光を示すことを見出した。一方、ピレン誘導体を担持した単分散シリカ粒子を調製し、構造色を示すことを確認した。得られた単分散シリカ粒子とポリ(エチレングリコール)メタクリレートを混合し、光重合を行うことで、高分子ゲルを作製した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画に従い、鎖長の異なるアルキルアミド鎖やエチレングリコール鎖を導入したピレン誘導体を合成した。合成した誘導体のうち、結晶性の誘導体は発光色の回復に加熱を要したが、油状物質として得られた誘導体と混合することで自己回復性を発現させることに成功した。また、分子間エネルギー移動を制御可能な二成分系色素により、当初の計画では想定していなかった二段階のメカノクロミック発光を実現した。一方、当初の計画通り、ピレン誘導体を担持し、構造色を示す単分散シリカ粒子を調製した。以上のように、本研究課題は当初の計画に従っておおむね順調に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
令和3年度は、鎖長の異なるアルキルアミド鎖、エチレングリコール鎖、パーフルオロアルキル鎖を有する各種ピレン誘導体を合成することで、機械的刺激付与後の自己回復速度が速い誘導体を見出す。また、各種誘導体とジメチルキナクリドンを混合した二成分系色素を調製することで、波長変化量の大きい自己回復性メカノクロミック発光を実現する。また、令和2年度に得られたピレン担持シリカ粒子を用いてフォトニック結晶ゲルを得る手法を確立するとともに、二成分系色素を用いたフォトニック結晶ゲルや高分子ゲル薄膜を創製する。
|