令和4年度においては、かさ高さの異なる種々の有機基を有するジスルホニルイミドを対アニオンとする、ビピリジン配位子および9-BBN骨格を有するボロニウム錯体を合成した。対アニオンがジスルホニルイミドの場合にも化合物固体に紫外光照射すると白色から赤色に着色することがわかった。結晶構造中におけるイオン間距離と光着色体の吸収波長との相関関係を調べ、前年度までに明らかにしていた対アニオンがアリールスルホン酸イオンあるいはテトラアリールホウ酸イオンである化合物における相関関係ともあわせて解析したところ、三種類の対アニオンの場合に共通して、最近接カチオン-アニオン間距離と光着色体の吸収波長が正の相関を示すことが見いだされた。このことから、ビピリジン配位子および9-BBN骨格を有するボロニウム錯体においては、光着色体の吸収波長に分子集合構造が及ぼす影響のうち、最近接カチオン-アニオン間距離の影響が最も基本的な要素であることがわかった。最近接カチオン-アニオン間距離の違いがどのようにして光着色体の吸収波長に影響を及ぼすのか、分子軌道に基づいた考察を行うために、密度汎関数法および時間依存密度汎関数法による理論計算もあわせて検討した。 以上を踏まえて令和2-4年度の結果を総括すると、ビピリジン-ボロニウム錯体のホウ素上の置換基にどのような構造を有すれば光応答着色特性を発現するか明らかにできたことに加え、ビピリジン-ボロニウム錯体の分子構造の変化が分子集合構造の変化を介してどのように光着色体の吸収波長に影響するか、具体的な相関関係を明らかにできた。
|