研究実績の概要 |
(1)高移動度有機FET材料の合成:ヘテロ環縮合多環芳香族化合物を用いて極めて高い電荷移動特性を示す材料が報告されたこと(J. Hanna, Nat. Commun. 2015, 6, 6828)をふまえて,分子長軸方向にフェニル基と長鎖アルキル基を有する機能化[n]フェナセン(n = 4-6)を,光反応をキーステップに用いて簡便に合成した.新規に合成した[n]フェナセン類を用いた薄膜FETデバイスはp型特性を示し,比較的良好なキャリア移動度μ(10^-1~10^0 cm2 V-1 s-1のオーダー)を持って駆動することを確認している. (2)ジベンゾ[n]フェナセンの電荷効果トランジスタ特性:ジベンゾ[n]フェナセンDBnP(n=5-7)の単結晶X線回折より結晶構造を決定し,その結晶構造をもとに分子間の電荷移動積分やホール移動度を見積もった.三種のDBnPのうち,DB6Pが最もFET材料として優れていることを明らかにした.また,FET特性の温度依存性を検討した結果,C2h対称の分子構造を持つDB6Pにおいて結晶性の良さを示唆するトラップ状態密度分布が得られた. (3)イミド官能基化フェナセンの合成:イミド官能基化フェナセンがn型特性を有することをふまえ(Y. Guo, RSC Adv., 2020, 10, 31547),分子両端に電子吸引性のイミド基を有する[5]フェナセンを合成した.一般に,フェナセンは蛍光効率が悪いことが知られているが,この化合物は比較的強い青色の蛍光を発することを見いだした.次年度に,発光性の有機半導体としてのポテンシャルを検討する.
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