本研究では、かご型分子骨格の内部にπ電子系を回転子として架橋した化合物を「分子ジャイロコマ」として合成し、固体分子ローターとして固体内部の回転子の分子運動観察とその機能利用を研究対象としている。例えばフルオレンは、紫外線の照射により高効率の蛍光を示す優れた蛍光体として知られている。そこで、これを回転子とした分子ジャイロコマを合成した。この化合物の多結晶体においてフルオレン部分構造がわずかに振動運動していることが固体NMRの緩和時間解析から明らかになり、この結果固体蛍光量子収率が減少することを明らかにした。これは、制御された発光材料としての応用展開が期待できる。この成果は化学の専門誌New. J. Chem.に掲載された(DOI:10.1039/D2NJ05873A)。また、分子ジャイロコマ骨格の機能化を指向した新たな分子ローターとして、π電子系架橋ジアザマクロサイクルを設計・合成し、構造化学の詳細や溶液の回転子の運動を観察した。この成果は有機化学の専門誌であるJ. Org. Chem. (DOI:10.1021/acs.joc.2c01174)およびOrg. Biomol. Chem. (DOI:10.1039/D2OB01613C)に掲載された。さらに、将来の固体分子ローターの回転制御を指向した、フェニルトリプチセンベースの分子ローターの合成と回転運動について、Org. Biomol. Chem. (DOI:10.1039/D2OB01179D)に報告した。このほか、関連する機能有機分子の合成構造化学について、1件の学術論文発表を行い、分子トポロジー化学については、最新の成果の学会発表を行った。
|