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2022 年度 実施状況報告書

多励起子生成により光子定量反応を凌駕して分子変換する光触媒システムの創製

研究課題

研究課題/領域番号 20K05652
研究機関慶應義塾大学

研究代表者

酒井 隼人  慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 講師 (60708486)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2024-03-31
キーワード一重項分裂 / アセン
研究実績の概要

一重項分裂(SF)は一光子吸収から二つの三重項励起状態を生成する励起ダイナミクスである。そのため量子収率が最大200%まで達する。このダイナミクスを利用すれば従来にはない高効率な光反応システムの構築が期待できる。しかしながら、SFで生じた三重項励起状態を利用した光反応系の構築には、高収率生成と長寿命化が重要である。そこで本年度は、SFから三重項励起状態の高収率生成と長寿命化を主として検討した。これまで、SF発現可能な色素をリンカーで連結した二量体を用いてSFに関して検討してきた。その結果から、SF発現可能な二つの色素間で生じる相互作用を適度に制御すると高収率かつ長寿命な三重項励起状態の生成が可能であることを見出している。更なる長寿命化を達成することができれば、三重項励起状態を利用した様々な光反応系の構築が期待できる。そこで、SF発現可能な色素を複数連結したオリゴマーを構築し、生成した三重項励起状態を色素間で移動させ、長寿命化させることとした。本研究の検討にはSF発現可能なテトラセンを色素として用いることとした。テトラセンは励起三重項状態のエネルギーが比較的高いため、光反応システムの構築に利用することができる。そこでこの色素をオリゴマー化し検討することとした。オリゴマーを合成し分光測定を行った結果、色素間の移動には成功したものの逆方向にも進み生成した2つの三重項励起状態同士が衝突し失活する現象が確認された。これによりオリゴマーに伴う長寿命化の効果がわずかしか観測されなかった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

予定通り高収率なSFシステムの構築には成功しているものの、励起三重項状態の寿命が短い状態となっている。したがって現状、光反応の反応効率が思ったほど高収率にならないと予測される。したがって更なる改善が必要であると考えられるためである。

今後の研究の推進方策

SFから生成した三重項状態の長寿命化にオリゴマー化はさほどない効果がないということが分かった。そこで更なる長寿命化を目指し、生成した三重項状態同士の衝突を防ぐため、比較的柔軟性の高い分子の合成を検討する。その後目的の光反応システムの検討を行う。

次年度使用額が生じた理由

当初の予定だと現時点で光反応を検討している予定であった。しかしながら、今年度この検討ができず予定より遅れてしまっている。そのため次年度の使用額が生じてしまった。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2023 2022 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件) 学会発表 (4件)

  • [国際共同研究] Tampere University(フィンランド)

    • 国名
      フィンランド
    • 外国機関名
      Tampere University
  • [雑誌論文] Controlled molecular assemblies of chiral boron dipyrromethene derivatives for circularly polarized luminescence in the red and near-infrared regions2023

    • 著者名/発表者名
      Sakai Hayato、Suzuki Yudai、Tsurui Makoto、Kitagawa Yuichi、Nakashima Takuya、Kawai Tsuyoshi、Kondo Yuta、Matsuba Go、Hasegawa Yasuchika、Hasobe Taku
    • 雑誌名

      Journal of Materials Chemistry C

      巻: 11 ページ: 2889~2896

    • DOI

      10.1039/D2TC05006D

  • [雑誌論文] Thermodynamic Control of Intramolecular Singlet Fission and Exciton Transport in Linear Tetracene Oligomers2023

    • 著者名/発表者名
      Nakamura Shunta、Sakai Hayato、Fuki Masaaki、Ooie Rikuto、Ishiwari Fumitaka、Saeki Akinori、Tkachenko Nikolai V.、Kobori Yasuhiro、Hasobe Taku
    • 雑誌名

      Angewandte Chemie

      巻: 135 ページ: e2022177

    • DOI

      10.1002/ange.202217704

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Ultrafast Singlet Fission and Efficient Carrier Transport in a Lamellar Assembly of Bis[(trialkoxyphenyl)ethynyl]pentacene2022

    • 著者名/発表者名
      Sakai Hayato、Yoshino Keisuke、Shoji Yoshiaki、Kajitani Takashi、Pu Jiang、Fukushima Takanori、Takenobu Taishi、Tkachenko Nikolai V.、Hasobe Taku
    • 雑誌名

      The Journal of Physical Chemistry C

      巻: 126 ページ: 9396~9406

    • DOI

      10.1021/acs.jpcc.2c00864

    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] フェロセンをリンカーとするペンタセン二量体の合成と分子内一重項分裂2022

    • 著者名/発表者名
      早坂 稜、酒井 隼人、ニコライ トカチェンコ、羽曾部 卓
    • 学会等名
      2022年光化学討論会
  • [学会発表] ポリインで連結されたペンタセン二量体の長距離分子内一重項分裂2022

    • 著者名/発表者名
      酒井 隼人、婦木 正明、Tkachenko Nikolai、小堀 康博、羽曾部 卓
    • 学会等名
      2022年光化学討論会
  • [学会発表] 環状構造を有するテトラセン二量体の光物理化学特性2022

    • 著者名/発表者名
      早坂 稜、サザセティル シャキーブ 、酒井 隼人、相良 剛光、羽曾部 卓
    • 学会等名
      2022年光化学討論会
  • [学会発表] サイクレン骨格を基盤とした環状ペンタセン四量体の合成と分光特性2022

    • 著者名/発表者名
      水野 しおん、酒井 隼人、羽曾部 卓
    • 学会等名
      2022年光化学討論会

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公開日: 2023-12-25  

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