研究課題/領域番号 |
20K05654
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研究機関 | 東京工芸大学 |
研究代表者 |
平岡 一幸 東京工芸大学, 工学部, 教授 (50267530)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 液晶エラストマー / 高分子液晶 / 架橋 / フレクソエレクトリック効果 / 人工筋肉 |
研究実績の概要 |
楔型メソゲンを側鎖に持つ液晶エラストマーを、広がり変形下でフレクソエレクトリック効果による自発分極を発現させながら合成した。その自発分極の評価と電界誘起変形の定量的観測から、低電界駆動が可能なソフト固体材料の最適化設計を行っている。しかしながらR2年度はコロナ禍のため十分な実験ができず、電界誘起変形などに関わる定量的な実験まで至らなかった。 令和2年度の主な研究実績は以下の4点である。 (1)楔型メソゲンとしてコレステロール誘導体メソゲンを、さらに2官能性のクロスリンカーを、各々合成し、これらをポリマーバックボーンであるポリシロキサンにヒドロキシシリル化反応にて導入することにより側鎖型液晶エラストマーの合成に成功した。さらに引っ張り変形下における試料端のネッキングによる広がり変形を利用し、この広がり変形下で架橋固定した試料の作成に成功した。 (2)上述の引っ張り変形下で架橋した試料について、試料中央部ならびに広がり変形した試料端部について、偏光顕微鏡観察ならびにX線回折により、メソゲンの配向状態を評価した。中央部は均一に配向していること(秩序パラメータ0.82程度)、端部は中央部から右端(もしくは左端)にかけて配向ベクトルが17°傾いた広がり変形していることを確認した。また等方相の温度領域でも配向秩序パラメーターが0.2程度あり疑似的なネマチック構造になっていることを見出した。 (3)広がり変形した試料端部は、SmA*相の温度領域では静電気は発生しなかったが、等方相(疑似ネマチック構造)の温度領域まで昇温すると、フレクソエレクトリック分極によると考えられる静電気が発生した。 (4)広がり変形した試料端部に電界を印加したところ、等方相(疑似ネマチック構造)において、電界方向へ極性のある電界誘起変形が確認された。また引っ張り変形試料中央部においては電界誘起変形は観測されなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
熱機械測定装置の導入を行ったが、コロナ禍のため十分な実験ができなかった。そのため電界誘起変形など変形に関わる定量的な実験まで至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
研究実績で述べたように、広がり変形試料の作成法と電界誘起変形の観察法は確立した。また、室温やSmA*相の温度領域では静電気は観測されず、疑似ネマチック構造を持つ等方相への相転移とともに、フレクソエレクトリック効果によると考えられる静電気の発生が確認された。しかし静電気等の定量的な評価には至っていない。今後は、チャージメータを用いて電荷を測定し、その温度依存性から、SmA*相と疑似ネマチック構造を持つ等方相への相転移に伴う分極の発生を定量的に検討する。その上で、フレクソエレクトリック効果により発生する自発分極の発生機構を考察する。組成や架橋時の変形について組織的に条件を変えた試料を作成し、その自発分極を測定することで、広がり変形と分極の関係について定量的に解析し、自発分極を持つ試料を得るための応力印加架橋反応の最適化を行う。さらに、得られた広がり変形試料について電界誘起変形観察を行い、「広がり変形・自発分極・電界誘起変形」の3者について総合的に検討する。またネッキングにより広がり変形試料が得られた引っ張り変形に加えて、曲がり変形試料の作成を目的としU字変形下(馬蹄型変形下)で架橋した試料を作成し、その構造と物性を研究する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2年度はコロナ禍のため不十分だった実験を令和3年度に行うため、実験に使用する消耗材料費が次年度使用分となった。
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