研究実績の概要 |
本研究では,イオン部位を2個有するダイマー型イオン液体を合成するとともに,これに多価アルコール等の溶媒を添加することで水素結合型のイオン液晶複合体を構築し,その配向制御による低次元伝導性の発現,配向構造の固定化,さらにはキラル部位の導入によりらせん構造を有する液晶相の発現を目指している.目的化合物ののカチオン部位には,第四級アンモニウム系イオン液体の代表的なカチオンである,N,N-diethyl-N-methyl-N-(2-methoxyethyl)ammonium(以下DEMEと略記する)カチオン類似のカチオンを2個用い,対称型のダイマー構造とした.目的としたダイマー型イオン液体を,以下diDEME-I-nと表記する.ここでIはカウンターアニオンとして用いたヨウ化物イオンを示し,nは分子量末端に導入したアルキル鎖の炭素数を示す.事前に行っていた予備実験の段階も含め,前年度までの研究において,すでに10種類の化合物(In-diDEME-I-10, 12, 13, 14, 15, 16, 17, 18, 20, および 22)を合成し,これらに多価アルコールとしてエチレングリコール,1,3-プロパンジオール,グリセリン,およびジグリセリンをそれぞれ系統的に添加し,それらの相転移挙動等について検討を行ってきた.その結果,In-diDEME-I-nの末端アルキル鎖炭素数(n),添加溶媒の種類,およびその量と相転移挙動との間に一定の相関を見出すとともに,一部の複合体についてはX線回折測定を行い,その液晶相がColh相であること,および二次元NMR測定により溶媒分子の位置を特定し,液晶相の構造モデルを提案した. 前年度までに明らかとなったポリヨウ化物イオンの存在と,それが相転移挙動に多大な影響を与える点について,必要が生じた再測定を含め,2022年度に集中して検討した.
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