研究実績の概要 |
本研究では,イオン部位を2個有するダイマー型イオン液体を合成し,これに多価アルコールを添加することで水素結合型のイオン液晶複合体を構築し,その配向制御による低次元伝導性の発現,配向構造の固定化,さらにはキラル部位の導入によりらせん構造を有する液晶相の発現を目指した.目的化合物のカチオン部位には,第四級アンモニウム系のN,N-diethyl-N-methyl-N-(2-methoxyethyl)ammonium(以下DEMEと略記)カチオン類似のカチオンを2個用い,対称型ダイマーとした.目的化合物を,以下diDEME-I-nと表記する(Iはヨウ化物イオンを,nは両末端のアルキル鎖炭素数を示す).R3年度までの研究で10種類の化合物を合成し,それらに4種類の多価アルコールをそれぞれ添加し,相転移挙動の検討を行ってきた.しかしR3年度までの検討で,混在するポリヨウ化物イオンが相転移挙動に大きな影響を与えることが明らかとなったため,R4年度にその除去方法を確立し,サンプルの再合成と再測定を行った.その結果,In-diDEME-I-nの末端アルキル鎖炭素数,添加溶媒の種類,およびその量と相転移挙動との間に一定の相関を見出した.また一部の複合体ではX線回折測定により液晶相がColh相であること,および二次元NMR測定により溶媒分子の位置を特定し,構造モデルを提案した.R5年には,未検討であったIn-diDEME-I-nと多価アルコールとの組み合わせ・比率を変えた混合系の検討をすすめ,相転移挙動を決定した.さらに,In-diDEME-I-14のカウンターアニオンを種々変更した系についても同様の検討を行い,一部の組み合わせにおいて他の系と異なり,スメクチック相の発現を確認した.さらに一部の系においてイオン伝導度の測定を行い,液晶状態において最も高い伝導度を示すことを明らかにした.
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