本研究の最終年度では、前年度までに判明したSrTiO3コーティング層によるRu溶出効果が、コーティング層の構造の違いにより変化することを確認し、OER反応を大きく阻害せずにRu溶出を抑制可能なコーティング層について検討を行った。その結果、当初の学問的問いである「薄膜形状で検討された触媒デザインがバルク体でも有効か?」に対して、薄膜と同様の現象を粒子形状の材料で再現することに成功した。 本申請研究の全期間において、金属アルコキシドを用いた複合金属酸化物のコーティングをサブミクロンサイズの粒子表面に形成することに成功した。また得られたコーティング層の構造は、金属アルコキシドの立体障害効果により大きく変化することを示唆する結果が得られた。これはコーティング前駆体分子である金属アルコキシド成分とコア粒子表面の親水基との反応性の違いに起因していると考えられる。またこの現象を利用して、OER触媒として有望なCSRO粒子表面に対してRu成分の溶出抑制を目的としたSTOコーティングを実施した。 得られたインピーダンス測定の結果より、OER活性を大きく阻害せずRu成分の溶出抑制が可能である事を示す結果が得られ、特に1-プロポキシド系の前駆体分子でコーティングを実施したCSRO-STOコアシェル粒子では、可逆水素電極基準で1.426V以下でRu溶出の抑制に成功した。また得られた粒子を搭載した電極を作製しOER活性のサイクル特性を評価したところ、コーティングによる過電圧の低下は認められず、当初目的であったOER活性を阻害しないコーティング層の形成に成功した。またサイクル特性を評価したところ、コーティング層の構造の違いによりサイクル安定性に大きな違いが認められ、緻密なコーティング層が形成されたと想定される1-プロポキシド系のコーティング粒子を用いた事で、サイクル特性の大幅な改善が見られた。
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