研究課題/領域番号 |
20K05662
|
研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
籠宮 功 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40318811)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | イオン輸率 |
研究実績の概要 |
本研究では、トリプルコンダクターの各輸率、部分導電率(電子(ホール)、プロトン、酸化物イオン)を正確に定量評価し、この系のイオン伝導機構を明らかにすることを重要課題の一つとしている。しかし、伝導イオン種としてプロトン、酸化物イオンの二種類が存在する物質において、各輸率、部分導電率を定量評価することがこれまで困難であった。本年度は、特にこの場合のプロトン、酸化物イオン各輸率の評価を可能とする新たな手法を考案し、評価できることを実証した。具体的には、二種類の伝導イオン種に対する二条件の異なる化学ポテンシャル勾配下において酸化物間に生じた起電力の差を取ることにより、この測定した起電力に含まれる系統誤差の原因となる熱起電力、分極成分を除去した。さらにいくつかの異なる化学ポテンシャル勾配条件下の起電力の差を求め、それらの連立方程式により、各輸率が導出可能であるかを検証した。この検証のためのモデル材料として、安定化ジルコニア(YSZ)を取り上げ、輸率を求めたところ、400-600℃の温度範囲で酸化物イオン輸率がほぼ1、プロトン輸率がほぼゼロとなり、正しく求まめられることを実証した。さらに、Sr-Ti系層状ペロブスカイトの輸率を同手法で調査したところ、500-600℃の温度範囲でプロトン輸率が約0.9,電子(ホール)輸率が約0.1のプロトン-電子混合伝導体であることが分かった。以上の結果は、後述の論文、特許として報告済である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的を達成する上で、対象とする酸化物のプロトン、酸化物イオン各輸率の知見が重要となるが、そもそもこれまでこのような伝導イオン二種の各輸率を求めることが一般的に困難とされていた。この評価を可能とする上記のような新手法を本年度中に確立できたことにより、今後、本研究をスムーズに遂行できる状況にあると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、以上確立した手法も積極的に活用することで、対象とするトリプルコンダクタ、混合伝導体の各イオン伝導性を明らかにする。一方で、これらの対象物質の結晶構造、酸素欠陥構造を明らかにし、イオン伝導性との関係を系統的に調査する。以上より対象物質のイオン伝導機構を明らかにする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の関係で、学会参加に予定していた旅費が未使用となった関係で次年度使用額が生じた。この分は次年度に積極的に成果発表する際に用いる。
|