研究課題/領域番号 |
20K05664
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
小島 達弘 大阪大学, 理学研究科, 助教 (80766501)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 多孔質触媒 / ポリオキソメタレート / 超分子フレームワーク / 多核錯体 / X線結晶構造解析 |
研究実績の概要 |
本研究では、多核錯体分子をベースとしたナノサイズの多孔質フレームワークを構築し、その内部に分子性触媒であるポリオキソメタレートを担持させた多孔性触媒の開発を目的としている。 初年度では、予備的実験によって得られていた三脚型のトリホスフィンとアミノ酸であるD-ペニシラミンを配位子として金・銀・銅を含んだカチオン性十二核錯体からなるイオン性結晶の合成法の確立を行った。詳細な結晶化条件の検討の結果、反応溶液を低温で濃縮後に室温で素早く結晶化させることで、速度論的に安定なトリフルオロ酢酸イオンを対イオンとするイオン性結晶を高収率で得ることに成功した。このイオン性結晶の構造は高輝度なX線である放射光を利用した単結晶X線構造解析によって決定した。その結果、代表的な金属有機構造体(MOF)の一種であるMIL-101と類似のトポロジーを有し、二種類の巨大なメソポーラス空間を有することを明らかにした。このイオン性結晶は配位結合で連結されたMIL-101とは異なり、フェニル基間のCH…π相互作用といった弱い分子間相互作用で支えられたカチオン性の超分子フレームワークであった。そのため、このメソポーラスイオン性結晶は水への溶解度が高く、非常に不安定であったが、対イオンをヘキサフルオロリン酸と交換し水への溶解性を下げることで、安定化に成功した。これにより、このメソポーラスイオン性結晶の結晶内部を反応空間として利用することが可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は、ホストフレームワークとなる多核錯体分子をベースとしたイオン性結晶の合成法の確立を行った。結晶化条件を検討することで、高収率で目的のイオン性結晶を安定に得ることに成功した。このイオン性結晶は非常に不安定であったが、対イオン交換を行うことで、安定性を高めることに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度には、初年度で安定化に成功したメソポーラスフレームワークのイオン性結晶を用いて、ゲスト包接や結晶内部でのポリオキソメタレートを中心とした化学反応を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 新型コロナウイルスにより、海外における実験や国際会議参加などの出張が減ったため旅費が大幅に抑えられた。また、同じく新型コロナウイルスの影響で当初予定していた実験に一部変更が生じたので、予想していたよりも消耗品の購入を中心とした物品費が抑えられる結果となった。 (次年度以降の使用計画) 初年度に延期していた実験の消耗品の購入を中心とした物品費に使用する予定である。
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