研究課題
本研究課題はメソポーラスイオン性結晶内部で触媒活性点となり得るポリオキソメタレートを直接合成するという手法による多孔質触媒材料の構築を目的とした。初年度に多核錯体分子をベースとしたカチオン性メソポーラスフレームワークのイオン性結晶の合成・安定化の確立を行った。二年度には安定化に成功したイオン性結晶の内部に各種金属オキソ酸や色素分子の吸着に成功した。三年度にイオン性結晶内部で、結晶性を維持したまま金属オキソ酸(タングステン酸、モリブデン酸、バナジン酸、クロム酸)が縮合反応により多核化が進行することを確認している。最終年度はこのポリオキソメタレートを担持した固体を用いて各種触媒反応の検討を行った。各種スルフィド(ジメチルスルフィド、ジフェニルスルフィド)過酸化水素を酸化剤とし、各種固体を不均一系触媒として加えたアセトニトリル溶液のH-NMRによるスルフィドの酸化反応について検討を行ったところ、いずれの固体もわずかながら触媒活性を示すことが明らかとなった。しかしながら、反応の最中に固体が崩れていく様子と、一部の溶液に呈色が見られたことから元のフレームワークを維持していないことが分かった。溶媒を水にして同様の実験を行うことで、固体触媒の溶解と溶出は避けることはできたが、顕著な触媒回転数や安定性を示すような結果には至らなかった。これらはカチオン性多核錯体間の弱い分子間相互作用(CH-π)によって支えられたフレームワークが反応に対して安定に構造を維持できなかったためであると考えられる。以上の結果を踏まえて、本研究で得られた多孔質触媒は、液相での触媒反応よりも気相での触媒反応に適している可能性が示唆された。これらの提案は研究期間内での実施には至らなかったが、今後の課題として引き続き検討を行う。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件)
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