研究実績の概要 |
ヘキサクロロシクロトリホスファゼン (HCCP, N3P3Cl6) に2当量のチオフェノール (ArSH) を作用させると,2,2-ビスアリールチオ-4,4,6,6-テトラクロロシクロトリホスファゼン (1, N3P3Cl4(SAr)2) が得られる。これにアンモニアガスを作用させると,溶媒を適切に選択することにより,2種類目の置換基として NH2 が導入された 2,2-ビスアリールチオ-4,4,6,6-テトラアミノシクロトリホスファゼン (2, N3P3(NH2)4(SAr)2 in CH3CN) と 2,2-ビスアリールチオ-4,4-ジアミノ-6,6-ジクロロシクロトリホスファゼン (3, N3P3Cl2(NH2)2(SAr)2 in Et2O) をそれぞれ選択的に合成することができた。また,1 にフェノールを作用させると,2種類目の置換基としてフェノキシドが導入された 2,2-ビスアリールチオ-4,4-ジフェノキシ-6,6-ジクロロシクロトリホスファゼン (4, N3P3Cl2(OAr)2(SAr)2) が得られた。さらに,1 に別のチオフェノール (Ar’SH) を作用させると,単純な置換反応だけではなく,ArS 基のスクランブリングがおこることを見つけた。 HCCP にフェノールを作用させると,通常はモノ,ジ,トリ置換体など,様々な誘導体の混合物が得られてしまうが,対カチオンをリチウムにして -40 ℃で反応させることにより,過剰量のフェノールを用いてもモノ置換体 5 (N3P3Cl5(OAr)) だけが選択的に得られることを見つけた。現在は 5 に第二の置換基を導入する研究を行っている。 HCCP にアンモニアを作用させると,2,2-ジアミノ-4,4,6,6-テトラフェノキシシクロトリホスファゼン (6, N3P3Cl4(NH2)2) が得られる。これにフェノールを作用させると,2種類目の置換基としてフェノキシドが導入された2,2-ビスアリールチオ-4,4-ジフェノキシ-6,6-ジクロロシクロトリホスファゼン (7, N3P3(NH2)2(OAr)4) が得られた。現在はこのアミノ基の修飾を検討している。
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