研究課題/領域番号 |
20K05666
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
村上 直也 九州工業大学, 大学院生命体工学研究科, 准教授 (10452822)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 光触媒 / トラップ電子 / 光音響 |
研究実績の概要 |
本研究では,光触媒粒子中に存在するトラップ電子の反応機構を明らかにするとともに,これらを有効活用することによって,新たな光触媒反応系の構築に取り組む. まず,初年度は,「中赤外光音響分析系」と「トラップ電子を利用した光触媒反応系」の構築を目的とした. 酸化チタン(IV)(TiO2)中のトラップ電子には様々なエネルギー状態が存在すると考えられるが,反応に寄与できるものは比較的エネルギーの高い(伝導帯下端から浅い準位に捕捉された)トラップ電子と考えられる.トラップ準位から伝導帯への光吸収を利用して,これらのトラップ電子を検出することを目的に,分散型分光光源を用いた中赤外の光音響システムを構築した.粉末系で基礎検討を行ったところ,昨年度まで利用したフーリエ変換型の分光システムに比べ,カバーできる波長領域は劣るものの,単一波長では高いSN比が得られており,これによってトラップ電子の生成過程の経時変化測定が可能となった.今後は,このシステムを懸濁系の反応システムに拡張する. また,トラップ電子を用いた新しい反応系の構築も行った.懸濁反応系において,「反応容器にTiO2懸濁液とドナーを封入し,不活性雰囲気下で紫外光照射することにより,TiO2に電子を蓄積させる」「その後,紫外光照射を止め,アクセプタを注入し,トラップ電子による還元反応を行う」の2段階反応により検討を行った.この結果より,ニトロベンゼンからのアニリン生成,および,硝酸イオンからのアンモニア生成が確認でき,前者においては従来の反応よりも高い収率が得られることが確認できた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定であった,(1)中赤外光音響分光システムの確立と(2)トラップ電子を利用した光触媒反応系の構築において,どちらも順調に実験結果が得られている.以上の理由により,現在までの進捗状況はおおむね順調に進展していると思われる.
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今後の研究の推進方策 |
初年度で確立した「中赤外光音響分析系」と「トラップ電子を利用した光触媒反応系」を組み合わせ,実際のトラップ電子による反応が起こっている下で時間分解の分光測定を行う.反応するトラップ電子のエネルギー準位と添加アクセプタの酸化還元電位の相関関係より,反応機構の解明を行う.また,光音響分析による電子蓄積量(放出量)の量論解析と,生成物解析により電子の反応効率を算出し,反応の効率化を目指す. 一方,光触媒反応系では,様々な組み合わせの半導体粒子とアクセプタを検討することによって,トラップ電子を利用した光触媒反応系の適用範囲の拡張を行うとともに,この反応系のアドバンテージを示すことを目指す.
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