研究課題
本研究では,半導体粒子中に存在するトラップ電子の反応機構を明らかにするとともに,これらを有効活用することによって,新たな光触媒反応系の構築に取り組んだ.トラップ電子の反応機構の解明では,この分析を可能にするための中赤外の光音響システムを構築し,さらに分析系を拡張させていくことによって,トラップ電子のエネルギー準位の解析や懸濁(液相)系の反応下におけるトラップ電子の生成過程・反応の観測を行った.主に二酸化チタン光触媒粒子について様々な反応条件での分析を行うことによって,表面に存在するトラップ電子は伝導帯への励起プロセスを経由せずに,直接反応するプロセスが存在し,それらはアクセプターの種類に大きく依存していることを明らかにした.さらに上記分析と同時進行で,トラップ電子を用いた新しい反応系の構築も行った.「反応容器に二酸化チタンの懸濁液とドナーを封入し,不活性雰囲気下で紫外光照射することにより,二酸化チタンに電子を蓄積させる」「その後,紫外光照射を止め,アクセプタを注入し,トラップ電子による還元反応を行う」の2段階反応を用いて,ニトロベンゼン還元によるアニリン生成,硝酸イオン還元によるアンモニア生成,二酸化炭素還元によるメタノール生成,および,助触媒添加による水素生成反応が進行することを確認した.また,二酸化チタン以外にも本反応系に適用可能な光触媒材料の探索を行い,いくつかの材料で有効に機能することを確認した.
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 2件)
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