研究実績の概要 |
本研究ではd0,d10電子配置を有するd,pブロック元素の代わりに,近年報告されたfブロック元素である希土類を含む複合酸化物触媒を合成することで,新規光触媒の開発を試みた。希土類を含む光触媒では,他の希土類を置換固溶した場合の光触媒活性や,色素分解についての報告はされていないため,希土類を含むペロブスカイト型複合酸化物BaCe0.95R0.05O3(R = La, Pr, Gd)を合成し,可視光照射下の光触媒活性を色素分解により評価するという着想に至った。 紫外光応答型光触媒であるBaCeO3の錯体重合法による合成時の焼成温度と,残存する不純物との関係について明らかにした。XRD測定やTG/DTA測定,IR測定より,1100°C以上の焼成で不純物相であるBaCO3相は消滅することが分かった。しかしながらMB色素分解試験では,1000°Cで焼成したBaCeO3が最も高い光触媒活性を示した。これは,不純物であるBaCO3の存在が光触媒活性を阻害しないため,不純物の有無よりも粒径制御による比表面積の増加が光触媒活性に影響した結果であると考えられる。 続いて,BaCeO3を母体とする固溶体試料BaCe0.95R0.05O3(R = La, Pr, Gd)を合成し,その光触媒活性を可視光照射下で評価した。MB色素分解試験では,全ての固溶体試料BaCe0.95R0.05O3が,BaCeO3より高いMB分解効率を示した。また,拡散反射スペクトル測定よりBaCe0.95R0.05O3はいずれもBaCeO3より狭いバンドギャップを有することが示唆された。例えば,BaCe0.95Pr0.05O3ではバンドギャップ2.46 eVでMB分解効率96%であった。バンドギャップを縮小しても光触媒活性を損なうことなく可視光応答型光触媒BaCe0.95R0.05O3(R = La, Pr, Gd)を合成することに成功した。
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