研究課題/領域番号 |
20K05680
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
田邉 資明 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特任講師 (20384737)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 窒素固定 / ボリルアミン / モリブデン / 常温常圧 / アンモニア / 触媒反応 / PNP型ピンサー配位子 / カリウムグラファイト |
研究実績の概要 |
当研究室では、常温常圧で窒素分子をアンモニアへと触媒的に変換反応において、SmI2を還元剤として用いることで、水をプロトン源とする触媒反応の開拓に成功している。一方でアニオン性のピロール骨格を基盤とするPNP型ピンサー配位子を有する種々の遷移金属錯体を用いることで、温和な条件下で窒素をアンモニアなどに触媒的に変換する反応の開拓にも成功して来た。そこで本研究ではまず、ピロール骨格PNP型ピンサー配位子を有するMo(III)ジヨード錯体を新規に合成し、その触媒活性をまず明らかにした。また、当研究室では、常温常圧で窒素分子をアンモニアやアンモニア等価体であるシリルアミンへと触媒的に変換する反応の開発に成功して来た。しかしながら常温常圧で窒素分子を直接的に他の含窒素化合物へと変換する反応は報告が限られており、そのほとんどは当量反応に留まっていた。最近になってモリブデン錯体を触媒とする、常温常圧での窒素分子のボリル化による触媒的ボリルアミン生成反応が報告された1)。これらの研究背景を踏まえて当研究室で開発してきた種々のモリブデン錯体を触媒として用いた、窒素分子のボリルアミンへの触媒的な変換反応を検討した。常温常圧下でKC8を還元剤、クロロボランをボリル化剤、モリブデン錯体を触媒として用いることで、触媒的なボリルアミン生成反応を検討した。するとピリジン骨格を基盤とするPNP型ピンサー配位子を有するモリブデンの架橋型窒素錯体またはその前駆体を触媒として用いた場合、触媒的にボリルアミンが生成することを見出した。特にB-クロロカテコールボランをボリル化剤として用いた場合、酸処理後に最大で5当量のアンモニアが生成した。本触媒反応は単座ホスフィンを補助配位子とする古典的な窒素錯体でも進行しており、その反応機構についても考察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請者は光励起下での水の触媒的酸化反応により生成した酸を、窒素をアンモニアへと変換する反応のプロトン源として用いることで、触媒的にアンモニアを生成する反応に成功している。そして今回ピリジンPNP骨格を有するモリブデン窒素錯体を触媒とする窒素のボリル化反応に成功しており、当初の目的の第二段階は達成したといえる。
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今後の研究の推進方策 |
種々のモリブデン錯体について、引き続き、常温・常圧での窒素ガスの触媒的ボリル化反応を検討する。また4-アルキル-1,4-ジヒドロピリジンを用いた窒素ガスの直接的アルキル化反応を合わせて検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により一部の研究計画の予定が変更となり、消耗品の購入が翌年度に繰り越しとなってしまったため。
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