研究実績の概要 |
当研究室では、常温常圧で窒素分子をアンモニアや、アンモニア等価体であるシリルアミンへと触媒的に変換する反応の開発に成功して来たが、常温常圧で窒素分子を直接ほかの含窒素化合物へと変換する反応は報告が限られており、そのほとんどは当量反応に留まっていた。そこで当研究室で開発してきた種々のモリブデン錯体を触媒として用いた、窒素分子のボリルアミンへの触媒的な変換反応を検討したところ、ピリジン骨格を基盤とするPNP型ピンサー配位子を有するモリブデンの架橋型窒素錯体またはその前駆体を触媒として用いた場合、触媒的にボリルアミンが生成することを見出した。 また、光誘起電子移動触媒と光学活性二核ルテニウム触媒、化学量論量のルイス酸を用いたプロパルギルアルコールの不斉アルキル化反応を開発した。様々な置換基を有するプロパルギルアルコール、4-アルキル-1,4-ジヒドロピリジンを基質として用いることが可能であり、高いエナンチオ選択性かつ高い収率で、プロパルギル位に不斉四級炭素を有するプロパルギル位アルキル化生成物を合成することに成功した。これまでエナンチオ選択的なプロパルギル位アルキル化反応の反応基質は、官能基などによって活性化されたアルキル化剤に限られており、本研究成果は汎用性の高いアルキル化剤によるプロパルギルアルコールのエナンチオ選択的プロパルギル位アルキル化反応の最初の成功例であるとともに、光電子移動触媒および遷移金属触媒を用いた、プロパルギルアルコールのラジカル反応剤によるエナンチオ選択的プロパルギル位置換反応の最初の成功例でもある。プロパルギル位に不斉四級炭素を構築する手段として、4-アルキル-1,4-ジヒドロピリジン由来のアルキルラジカルを利用する新しい合成手法を生み出したといえる。
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