研究課題/領域番号 |
20K05682
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
宮下 直也 東京大学, 先端科学技術研究センター, 特任講師 (20770788)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | III-V族化合物半導体 / 希釈窒化物半導体 / 太陽電池 / 中間バンド |
研究実績の概要 |
本研究はマルチバンド材料であるGaInNAsに着目し中間バンドを介した2段階励起レート向上と再緩和抑制に向け検討を進めている。GaInNAsはInとNの添加量を制御することによってGaAs基板上への格子整合が可能な材料として知られているが、N組成の増加に伴い導入される結晶欠陥の抑制が課題となっている。本年度は、GaAs基板上に製膜可能な中間バンド構造として、GaInNAs/GaNAs系多重量子井戸の歪み制御の検討を進めた。 GaInNAs井戸層のバンドギャップ制御において主にIn組成を変化させ、それに伴い生じる圧縮応力に対しては、引張り応力を及ぼすGaNAsを中間層として用いることで多重量子井戸全体の歪みを相殺することが可能である。はじめにGaInNAs/GaNAs構造における各組成および層厚を変調パラメータとして構造設計を行った。設計には分子線エピタキシーで製膜可能なGaInNAsおよびGaNAs結晶のパラメータを用いた。次いで、歪み制御によりGaAsに擬似格子整合させた20周期のGaInNAs/GaNAs MQW試料を分子線エピタキシー法によって作製した。また、結晶成長時の最適成膜温度探索を行った。高分解X線回折測定により構造解析を行い、良好な周期的ヘテロ界面が形成され所望の周期構造が作製できていること、GaAsの格子定数に対して概ね整合していることを確認した。また、フォトルミネッセンス法による発光特性評価を行い、MQWからの室温発光を確認した。上記のようにして、界面急峻性に優れ、室温発光が得られる高品質なMQW層の成膜条件の最適化を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
歪み補償技術を用い設計したMQW構造を分子線エピタキシー法により製膜する手法を確立した。また、PL評価により室温発光が得られる品質が得られており、達成度は概ね順調と判断する。
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今後の研究の推進方策 |
太陽電池構造の試作と2段階励起プロセスの評価に取り組む。また、2段階励起レート向上および再緩和抑制に向けGaInNAs系中間バンド構造の作製、検討を引き続き進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度上期の緊急事態宣言並びに感染症蔓延防止のための大学構内への入構制限措置への対応として、本研究で用いる予定の実験装置をシャットダウンさせる対応をとった。その影響により、実験計画を一部変更したため、2020年度に計上した物品費の一部を次年度に繰り越すこととした。また、同感染症蔓延防止の影響により、予定していた学会・出張が中止またはオンライン開催となったため、2020年度に計上した旅費の未執行分を次年度に繰り越すこととした。 2021年度は、前年度の計画変更に伴い未実施となっている実験を遂行するための物品、金属原料等の消耗品の購入を計画している。
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