研究実績の概要 |
本研究では,高性能な全固体リチウム硫黄電池実現のため,(I) 固体電解質材料合成の多様化を実現し,(II) 液相法を用いて,三次元規則配列したメソ孔を有するカーボンレプリカ(CR)内へ,硫黄活物質,固体電解質を導入した正極複合体の合成を行った. 最終年度は,アルジロダイト型のLi6PS5X (X = Cl, Br)に着目し,液相合成とアルゴン気流下での焼成を組み合わせた,固体電解質合成プロセスを開発した.Li6PS5Xは溶媒中から析出した状態では,不純物が多く含まれるが,その後アルゴン気流下で550℃で焼成すると,アルジロダイト型相がほぼ単相で得られた.焼成後のイオン導電率は,組成によらず1 mS/cm以上の高い値を示した.また,液相合成とアルゴン気流下での焼成を組み合わせることで,1バッチの合成で5 g程度の均質な固体電解質が得られることを確認した.新プロセスで得られたLi6PS5Xの粒径を調べると,古典的な固相法で合成したLi6PS5X比べて,小さくかつサイズのそろった粒度分布を有することが分かった.特に,固相合成の場合は100マイクロメートルを超える粗大粒子が多く含まれるが,新プロセスでは50マイクロメートル以上の粒子はほぼ存在しない.こういった特徴から,硫黄-カーボンレプリカ(S-CR)と混合して正極複合体を作成する際に,凝集が進まず,均質なイオン導電経路が構築されると考えられる.最終的にS-CR-Li6PS5Xに加えて,ハロゲン化リチウム, 炭素材料などを混合し,CRの細孔径,各材料の重量比率や混合時間やプロセスを最適化することで,40サイクルにわたり800 mAh/g以上の高い放電容量を示す,正極複合体の構築を達成することができた.今後,複合体内の材料分布と電池性能の相関を解析することで,より高性能な複合体実現へ向けた定量的な指針獲得が期待される.
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