最終年度にあたり,酢酸系リチウム空気電池を構成し酸性空気電池作動の実証実験を行った.有機電解液と水系電解液を分離するセパレータにはこれまで検討してきた材料の中で,イオン導電率・機械的強度・水分子不透過性・化学的安定性に対して最適化されたLAGTP-3.0 wt.%LiCl-epoxy-10 wt.%TiO2を使用した.水系電解液には酢酸酸性電解液 (AcOH : H2O sat. LiAc (9:1 v/v) ) を使用し,酢酸電解液の蒸発を防ぐため2気圧下で酢酸空気電池を作動させた.加圧による酢酸電解液の蒸発量は,大気圧下での蒸発量に比べて約1/3に軽減できた.空気極は触媒,導電助剤,結着剤の3種類で構成した.本研究では触媒を白金担持カーボンに統一し,導電助剤の種類や構成重量比を変えて空気極の最適化を行った.導電助剤に気相法炭素繊維 (VGCF)を用いた場合に空気極のエネルギー損失が小さく,酸素の酸化還元反応が速いことが分かった. これらの電池部材を用いて空気電池を構成し,電池特性評価を行った.比較的低い電流密度0.07 mA cm-2で30サイクル(800 h)以上の充放電を達成した.開回路電位は4V程度と極めて高く,放電電位も約3.5Vと空気電池として最大級の電圧を示した.しかし,サイクルに伴って過電圧の増大が生じた.加圧下であっても電解液の蒸発は完全に抑制できず,空気極と電解液との接触面積が減少したと考えられる.空気極の大気側に撥水カーボンペーパーを取り付けたところ,過電圧の増大がある程度抑制可能であった.より大きな電流密度1.0 mA cm-2で30サイクル以上の安定したサイクルを行うことができたが,充放電のエネルギー効率は低く,充電電位に対して放電時のエネルギー損失は73 %と大きかった.充放電時の過電圧の低減が今後の課題として残された.
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