研究実績の概要 |
豊富な資源量を有するナトリウムと硫黄を電極活物質として用いかつ高エネルギー密度が得られるナトリウム-硫黄(NAS)電池は、持続的社会において重要な大型蓄電システムである。NAS電池はすでに実用化しているが、300°Cを超える高温作動が必要であり、溶融状態のナトリウムを用いるために安全面の不安もある。NAS電池を超える次世代電池を開発するためには、常温作動が可能な高容量電極活物質が必要である。 本研究では、全固体ナトリウム二次電池用の金属硫化物系の電極活物質の開発を行った。 今年度は昨年度に見出したNi1-xFexS2電極活物質および非晶質MoSx系電極活物質の構造解析および全固体ナトリウム二次電池における電極特性評価を行った。 メカノケミカル法によって、Ni1-xFexS2 (x = 0, 0.3, 0.5, 0.7, 0.9, 1)の組成において合成を実証し、NiS2-FeS2の全組成域においてpyrite 型の固溶体が作製できることを見出した。作製したNi1-xFexS2 (x = 0.3, 0.5, 0.7, 0.9)は、全固体ナトリウム二次電池において良好なサイクル特性と、NiS2、FeS2 単体よりも優れたレート特性を示した。以上より、NiS2とFeS2を固溶させることで、NiS2の高電位化、低材料コスト化、レート特性の向上に成功した。 非晶質MoSx系は、メカノケミカル法と多硫化モリブデンのアンモニウム塩の熱分解法の異なる手法で様々な組成の試料を合成し、それぞれ高容量電極として使用できることを見出した。メカノケミカル法で作製した試料は硫化モリブデンと硫黄の複合体の側面を有する一方で、熱分解法で作製した試料は、より均質であり、より高容量を示す傾向にあった。
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