本研究では、全固体ナトリウム二次電池用の金属硫化物系の電極活物質の開発を行った。 まず、合成プロセスを検討することで、簡易かつ量産が可能なであり高結晶性または低結晶性のナトリウム含有遷移金属硫化物の作製を可能にした。開発した手法は幅広い組成のナトリウム含有硫化物を常圧で合成できることが分かった。 Na2SとTiS2をNa2TiS3組成に調整した混合物を高温 (580oC)で反応させ、急冷することで特異な構造を有する新奇なNa2TiS3を作製できることをこれまでに明らかにしてきたが、高分解TEM観察の結果、積層欠陥、非晶質、双晶のドメインが混在する非常に複雑な積層構造が形成されていることが明らかになった。Na2TiS3は規則性を有する層状構造が室温安定相であるが、融点付近になると、複数存在するNaサイトの占有率の変化、NaとTiとのカチオンミキシング、配位構造の変遷、層状構造の揺らぎ(層状構造の融解)が生じることが示唆された。これらは、これまでにない概念の構造変化であり、高温における乱雑さを有する構造を急冷することによって凍結することで、高い入出力に耐えうる新規な電極材料が作製できたのではないかと考察している。今後のリチウムイオン電池やナトリウム電池用電極材料の開発手法に大きな影響を及ぼしうる結果である。 Na、Fe、Sのみから構成される新たな正極材料Na2FeS2を開発し、その充放電時の構造変化の解析を行った。Na2F2S2においては、FeS4 四面体が鎖状に連結した構造を有するが、充放電におけるNaの挿入脱離によって、鎖状 FeS4 配列が歪曲し、長距離規則の喪失することで非晶質化する充放電機構を明らかにした。
|