研究実績の概要 |
アノード酸化によって作製される金酸化物皮膜の正極放電特性,特に放電容量を定量的に評価するためには,金酸化物生成量の再現性・安定性の高いアノード酸化条件を確立する必要がある.昨年度は,金のアノード酸化条件を従来の電位制御から電流制御に変更し,参照電極を使用しない簡素な2電極の構成とすることにより,酸化皮膜生成量の再現性が高まった.しかし,この条件でアノード酸化を行っても突発的に酸化皮膜の生成量が下ってしまう現象が見られた.この原因は,アノード酸化前に実施している表面研磨時の汚染(研磨剤の有機成分の表面固着)によるものと考え,研磨後の金表面の電気化学的活性化手法の検討を進めた. 今年度は以下の論文を参考とし,0.5M硫酸水溶液中で水銀/硫酸水銀参照極に対して+1.75Vおよび-0.64Vを上端および下端の電位とし,50mV/sで1000サイクル掃引した.この前処理を行った金箔を用いて,0.2M硫酸水溶液中で50C/cm2の電気量までアノード酸化を実施し,+0.6Vから0Vのカソード掃引時に流れた電気量から金酸化物の生成量を測定した.同じ操作を8回行って金酸化物生成量の再現性を比較したところ,従来の方法に対して改善効果がみられた.しかし,この処理は27時間も要することから,より迅速な手法を検討した.掃引速度を10倍速の500mV/sとしたほか,電位をステップ変更させたところ,上端・下端電位でそれぞれ1秒保持する方法でも金酸化物皮膜生成量の安定性が得られ,8回のアノード酸化における金酸化物の生成電気量が平均値0.38C/cm2,変動幅003 C/cm2,標準偏差0.008となった. G. Tremiliosi-Filho, L. H. Dall’Antonia ,G. Jerkiewicz, J. Electroanal, Chem, 422, 149 (1997).
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