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2021 年度 実施状況報告書

酸化金電池の放電特性

研究課題

研究課題/領域番号 20K05692
研究機関東京工科大学

研究代表者

西尾 和之  東京工科大学, 工学部, 教授 (00315756)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワードアノード酸化 / 一次電池 / 水系電池 / 酸化金
研究実績の概要

アノード酸化によって作製される金酸化物皮膜の正極放電特性,特に放電容量を定量的に評価するためには,金酸化物生成量の再現性・安定性の高いアノード酸化条件を確立する必要がある.昨年度は,金のアノード酸化条件を従来の電位制御から電流制御に変更し,参照電極を使用しない簡素な2電極の構成とすることにより,酸化皮膜生成量の再現性が高まった.しかし,この条件でアノード酸化を行っても突発的に酸化皮膜の生成量が下ってしまう現象が見られた.この原因は,アノード酸化前に実施している表面研磨時の汚染(研磨剤の有機成分の表面固着)によるものと考え,研磨後の金表面の電気化学的活性化手法の検討を進めた.
今年度は以下の論文を参考とし,0.5M硫酸水溶液中で水銀/硫酸水銀参照極に対して+1.75Vおよび-0.64Vを上端および下端の電位とし,50mV/sで1000サイクル掃引した.この前処理を行った金箔を用いて,0.2M硫酸水溶液中で50C/cm2の電気量までアノード酸化を実施し,+0.6Vから0Vのカソード掃引時に流れた電気量から金酸化物の生成量を測定した.同じ操作を8回行って金酸化物生成量の再現性を比較したところ,従来の方法に対して改善効果がみられた.しかし,この処理は27時間も要することから,より迅速な手法を検討した.掃引速度を10倍速の500mV/sとしたほか,電位をステップ変更させたところ,上端・下端電位でそれぞれ1秒保持する方法でも金酸化物皮膜生成量の安定性が得られ,8回のアノード酸化における金酸化物の生成電気量が平均値0.38C/cm2,変動幅003 C/cm2,標準偏差0.008となった.
G. Tremiliosi-Filho, L. H. Dall’Antonia ,G. Jerkiewicz, J. Electroanal, Chem, 422, 149 (1997).

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

4: 遅れている

理由

放電特性を評価する実験において,活物質である金酸化物の生成量を決定する事が非常に重要である.昨年度の検討では不十分だった事が判明し,アノード酸化条件の確立に想定以上に手間取ってしまった

今後の研究の推進方策

硫酸水溶液中で生成した金酸化物の正極放電特性を評価する.金酸化物皮膜定量の際のカソード還元において,掃引速度が高い方が還元電気量が多くなる傾向が見られたことから,定電流放電測定では高速放電時の挙動にも着目していく.続いて,基準の電解液とする硫酸水溶液以外の電解液種,pH,化成時の電位,温度などの条件を変えて酸化金多孔質皮膜を作製する.これらの多孔質皮膜の微細構造と電極特性の解析を通して,起電力と内部抵抗を中心として,優れた放電特性を示す酸化金皮膜の条件を明らかにしていく.
その後,金アノード酸化皮膜の電池特性を把握していく.酸化金皮膜を正極とし,水系一次電池の負極として一般的な亜鉛を負極としてその放電特性を評価する.その後,電池特性を向上させるために負極材料,電解液,酸化金の形成量などを詳細に検討し,新型の電池としての可能性を明らかにする.

次年度使用額が生じた理由

予定していた放電特性の評価を進めることができず,金箔の消費量が計画よりも少なかったことが,次年度使用額が生じた主な理由である.今後は,金酸化物皮膜の正極放電特性を詳細に検討する予定であり,これまで消費量が少なかった金箔の購入のほか,金酸化物の自然放電特性評価用のクールインキュベーター,コインセル制作装置を順次購入して今回の差額を含めて研究を推進する予定である.

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公開日: 2022-12-28  

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