研究課題/領域番号 |
20K05696
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
田中 真悟 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 研究グループ長 (50357448)
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研究分担者 |
多田 幸平 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 主任研究員 (70805621)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 局所機械的性質 / 第一原理計算 / 二次イオン電池 / Liイオン電池 / Naイオン電池 / 局所エネルギー解析 / 局所応力解析 |
研究実績の概要 |
本研究では、Liイオン電池やNaイオン電池のような二次電池の材料に関して、計算科学を駆使してナノ・原子レベルでのミクロスケールの局所構造と局所機械的 特性の研究を遂行する。また、研究に必要な解析手法・プログラムの改良・開発を行う。得られた結果を基に、AIによる機械学習・深層学習を活用して構造と特性を「診断」し、新たな材料開発を行う上で必要となる「処方箋」の提供に向けた仕組みを構築していく。上記を遂行するために第一原理計算手法を基にした局 所エネルギー・応力解析によるミクロスケールでの局所機械的特性について、二次電池電極材料の充放電時のバルク・粒界・界面を具体例として研究をすすめ、 その適用性を明らかにすると共に、その結果を深層学習等のAIを用いた分析により、汎用性・転移性の高いデータベースとして開発を行うことを目的としている。実施2年目となる2021年度は、新型コロナウィルス蔓延に伴う緊急事態宣言及び蔓延防止等措置の期間が年度は過半を占める状況となり、想定していた研究進捗には至っていないが、局所エネルギー・応力解析プログラムの改良・開発に関しては、局所領域を判定するユニットを原子から分子・クラスターなどへ拡張をするための実務をすすめた。 二次電池系材料への第一原理計算と現行・拡張手法による局所解析を実行し、その結果を解析しつつ、AIを用いた分析・学習の適用性と実装に向けた検討を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
解析プログラムについては、昨年度実施した局所領域判定ユニットの拡張の検討状況を元にプログラムの改良を実施した。現行手法である原子単位の局所領域を用いた場合、イオン結合性や金属結合性が強い系に対して広く適用が可能であることは示されてきたが、共有結合性が強い系だけでなくイオン結合性の強い系においてもアルカリイオンのように化合物においてイオン周りの価電子が乏しく領域(便宜上は原子領域)の特定が困難になるケースが出てきた。このようなケースにおいては、局所領域として原子間 を含むもの(分子又は類するもの)やクラスタ(原子・分子を複数含むもの)を設定し、複数の設定領域で試行することにより判定可能(若しくは可能性が高く)なることが分かった。現行手法の適用可能性については昨年度の研究成果で報告済みだであるが、拡張した手法については新型コロナウィルス蔓延に伴う行動制限などで、想定していた成果報告(論文・学会発表など)が十分には出来なかった。フッ化鉄系正極材料に関する局所エネルギー・応力解析の成果については、学会発表(日本物理学会2021年秋季大会)を行なった。また、チタン酸リチウム(LTO)系・チタン酸ナトリウム(NTO)系において大規模データを獲得し、AI・機械学習へ活用するための試行は昨年度より実施してるが、有効性の実証には至っていない。一方で昨年度報告した研究成果(K. Tada et al., RSC Advances 10, 33509 (2020))において存在を予言していた材料(スピネル型チタン酸銀)の合成に成功する報告(M. Kitta et al., J. Solid State Chem. 303, 122514 (2021)) が発表されるなど、波及効果も出始めているところ。上記成果を学会誌に解説記事(応用物理学会誌2022年1月号)を執筆・掲載した。
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今後の研究の推進方策 |
最終年(2022年)度は、これまでに改良した解析プログラムの整備と現行手法で実施した系と新手法が有効と考えられる系(共有結合性が強い系やイオン結合性が強く且つアルカリイオンを含む特定の化合物系など)で局所領域判定に関する有効性の比較検証を進める。その上で、二次電池電極材料(酸化物系、硫化物系・フッ化物系など)、Li, Na, Mgなどの金属負極材料、共有結合性の強い材料(シリコン系、炭化ケイ素系など)など既存材料に対して、第一原理計算を用いて局所構造と機械的特性の解析を進めていくと共に、AI・機械学習を活用して局所的に優れた機械的特性を示す可能性がある新規材料の設計・探索を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス蔓延に伴い、研究活動(現地での学会参加など)の制限及びテクニカルスタッフの雇用日数を抑制したため。今年度は新型コロナウィルスに伴う行動制限も想定した上で、研究計画・予算遂行を実施する。
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