研究課題/領域番号 |
20K05697
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
望月 敏光 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 主任研究員 (30549572)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | テラヘルツ / 時間領域分光 / 太陽電池 / 鉛ハライドペロブスカイト化合物 |
研究実績の概要 |
テラヘルツ時間領域分光は励起光波長により多様な物質の評価が可能であり、現在盛んに研究が行われている鉛ハライドペロブスカイト化合物を使った太陽電池も評価が期待できる。鉛ハライドペロブスカイト化合物薄膜からの光励起テラヘルツ放射については先行研究があり、photo-Dember効果とよばれる電子と正孔の移動度の拡散長の違いと界面の存在により過渡的な分極が誘起されることによる放射が支配的であり、シリコン系では支配的な要因である界面電場による効果は無視できることが系統的に示されていた。本研究では薄膜ではなく鉛ハライドペロブスカイト太陽電池試料からの光励起テラヘルツ放射を観測し解析したところ、強い逆バイアス電圧を外部から印加することでテラヘルツ放射の波形が反転することがわかった。外部印加した電圧は界面電場を変化させるので、薄膜の場合と異なり太陽電池試料においては、界面電場の成分がphoto-Dember効果を打ち消して余りうることが示された。界面電場の成分とphoto-Dember効果の成分を正確に分離しうる精確な放射モデルにより解析することが可能となれば、シリコン系と同様に界面の評価がテラヘルツ時間領域分光でできるようになると期待できる。また、経時劣化の進んだペロブスカイト太陽電池において連続的にテラヘルツ放射の振幅が弱まっていく様子が画像的に示された。本研究の成果はMDPI Photonics誌に招待論文として投稿された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
太陽電池領域においてはシリコン系太陽電池の完成度がコスト的な意味を含めて非常に高まる一方で、鉛ハライドペロブスカイト化合物は高効率低コストかつ軽量な太陽電池の材料の候補として注目を集めその研究が盛んに行われ、その性能も急速に向上している。また、鉛ハライドペロブスカイト化合物はバンドギャップの制御が比較的容易であり結晶シリコン太陽電池とのタンデム用トップセルの材料としても期待されている。このような状況にあってテラヘルツ時間領域分光による半導体評価の応用の可能性を探った所、photo-Dember効果との干渉はあるもののペロブスカイト太陽電池の界面評価にテラヘルツ時間領域分光が応用できる可能性があることを示せた。
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今後の研究の推進方策 |
鉛ハライドペロブスカイト化合物半導体を評価するのに適した光学系を持つ京都大学・川山巌准教授との共同研究で本年度の成果の深堀りを期待している。また、シリコン結晶系にあってはタンデム太陽電池に多用されるTOPCon系の構造の評価や、酸化膜作製時の元素ドープによる表面電場の制御の様子をテラヘルツ時間領域分光で評価したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
見積もり競争等により予想より購入物が安価であったため。
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