研究実績の概要 |
本研究課題の目的は、三次元・立体構造を有する多孔質金属メッシュ表面に、非晶質カルコゲナイドナノ構造体を合成するための新規な材料プロセスを開発し、水分解に関与する活性点を明らかにすることによって、高効率水分解電極を創製するための新しい物質・材料化学を切り開くことである。令和3年度の研究では、昨年度に合成された(M,Co)(OH)2ナノワイヤー集合体を熱処理することによって得られたMCo2O4(M = Co2+,Ni2+,Zn2+)ナノワイヤー集合体の基礎物性と電気化学的性質について検討した。 水熱法によってニッケルメッシュ表面上に合成された(M,Co)(OH)2ナノワイヤー集合体(M = Co2+,Ni2+,Zn2+)を熱処理すると、脱水反応により水酸化物から非晶質の酸化物へ構造変化が生じ、ナノワイヤー構造を保持したまま、スピネル構造を有するCo3O4、NiCo2O4およびZnCo2O4ナノワイヤー集合体へと結晶化することが電子顕微鏡観察、ラマン分光測定およびX線回折測定から明らかとなった。また、X線光電子分光測定からNiCo2O4系およびZnCo2O4系の試料において、熱処理温度が上昇すると格子酸素に対する表面吸着酸素の比が減少することが明らかとなった。 熱処理により得られた酸化コバルト系ナノワイヤー集合体の水分解のための酸素発生過電圧について検討した結果、、格子酸素に対する表面吸着酸素の比が大きい試料ほど酸素発生過電圧が低下することが明らかとなった。以上の結果から、表面に酸素(水溶液中では水分子や水酸化物イオン)が吸着しやすいサイトが水分解活性点として作用して、試料の電気化学的性質に影響を及ぼしているものと推察された。
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