研究課題/領域番号 |
20K05703
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
竹森 洋 岐阜大学, 工学部, 教授 (90273672)
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研究分担者 |
古田 享史 岐阜大学, 工学部, 教授 (40173538)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | メラノソーム / 薬物送達 / 蛍光ラベル / GFP / 細胞間輸送 / 細胞内小胞 / 細胞外小胞 / エクソソーム |
研究実績の概要 |
本研究は「白色メラノソーム」という新たな概念での薬物送達担体の研究である。薬の有効性向上と副作用低減における薬物送達システム「DDS」の重要性から、 カプセル・抗体を利用した様々な形態・手法が実用化されている。また最近では、miRNAの輸送にエクソソームの利用が注目を集めている。しかし、エクソソームはサイズが100nm以下しかないため、実用化を目指したエクソソームの制御法開発には、特殊な機器・試薬及び技能を必要とする。 本研究では、10倍サイズのメラノソーム(エクソソームと起源が同一)に着目し、欠点を克服する以下の研究を通じて、新規薬物送達システムの可能性を検証する。加えて、開発する技術をエクソソームにも転用し、エクソソームを介したDDS開発も加速させる。 具体的に開発する案件は、動態追跡を困難にする黒色色素メラニンを含有しない白色メラノソームの開発、メラノソームの機能に紐付けされた蛍光ラベル分子のメラノソーム表面発現化、メラノソームを目的(標的)細胞へ特異的に送達する技術の構築、メラノソームへの低分子化合物の内包と、送達後に放出する技術の構築である。 メラノソームでのモデル系が構築できた場合は、エクソソームでも同様な技術が利用可能か検証する。加えて、薬物送達には、メラノソーム本来の目的細胞特異性発揮のみならず、送達先の細胞種の変更も可能とする技術も必要となる。エクソソームの細胞取り込み機構を参考に、任意の細胞に取り込ませる技術も開発する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
薬物送達システム(DDS)の輸送担体としてメラノソームを利用する。メラノソームの細胞間輸送を追跡には黒色メラノソームが便利である。細胞特異的送達系の構築には、黒色メラノソームを先行利用し、メラノサイトーケラチノサイト間の輸送を可視化した。特に、ケラチノサイト側を前もってラベルすることで、2種の細胞が混入した状態でも、メラノソーム輸送の評価を可能とした。一方、メラノソーム取り込み機構の解明と内包化合物の可視化には、白色(メラニン沈着の少ない)メラノソームを蛍光ラベル化することで、輸送効率をより数値化できた。また、従来のマーカー追跡(CD63など)でも評価し、送達効率の相関を求めた。この際、マーカータンパク質は、GFPやmCherryとの共発現系を利用した。メラノソームに加えて、細胞外小胞であるエクソソームも同様に評価するため、エクソソームラベル化剤の開発も実施した。メラノソーム蛍光ラベル化剤はエクソソームも効率良くラベルし、培養細胞内への輸送を可視化した。成功した細胞は、メラノサイト、ケラチノサイト、肝臓由来細胞、腎臓由来細胞、大腸上皮細胞と広い種類で成功した。以上のように当初計画は順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
メラノソームやエクソソームに外来因子(最終的には抗がん活性を有する化合物)を導入し、取りまれた細胞の表現型の違いを評価する。外来因子は蛍光化合物NBD-PZでラベルすることにより、追跡を可能とする。また、アルコキシカルボニルオキシ化により、NBDと分離しやすくもする。蛍光物質NBD-PZは、リソソーム等の酸性小胞へ特異的に蓄積する。メラノソームのpHも低い。一方、メラノソームはケラチノサイトへ送達後は中性に戻る。アルコキシカルボニルオキシ化は、薬物の胃通過を目的として利用される修飾である。一方、この修飾は中性域でエステラーゼ基質となり分解される。これらの特性を利用し、蛍光化-抗癌剤をメラノソーム精製後に(もしくはメラノサイト内で)、メラノソームへ内包する。 NBD-PZの蛍光に影響しないピペリジンに複数のアルコキシカルボニルオキシ誘導体を縮合させ、内包と放出の双方が可能な目的化合物(抗癌剤)を選択する。目的細胞と非目的細胞の混合培養における特異的抗癌活性を評価する。抗癌活性以外にも、抗炎症活性をジテルペン類で実施し、送達後の特異性発揮を検証する。
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