研究課題
本研究では、グアニン豊富なRNAが形成するグアニン四重鎖RNA(G4RNA)とG4結合タンパク質によって形成される凝集体の形成機構とその機能の解明を目的としている。特に1年目は、G4に結合するタンパク質の網羅的に解析するための手法の開発を行った(Chem. Comm. 56, 11641-11644, 2020)。既存のG4結合タンパク質検出法であるプルダウンアッセイ法などでは、結合力の弱いG4結合タンパク質を同定することが困難となっているため、G4結合タンパク質はほとんど明らかになっていない。そこで、G4結合小分子であるヘミンが有するペルオキシダーゼ活性を利用して、G4結合タンパク質を選択的にビオチン化修飾することで、網羅的に解析する方法を研究協力者の東北大学の佐藤伸一助教らと共に開発した。まず、G4結合タンパク質として知られているUP1に対する試験管内でのこの修飾の反応性を解析した。その結果、G4存在下で効率的にUP1がラベル化されることがわかった。さらに、このラベル化されるUP1内のアミノ酸をMS/MSによって解析したところ、以前のUP1と核酸のX線結晶構造解析の結果から予想される核酸結合領域近くのチロシン残基が特異的にラベル化されていた。これらの知見を元に、HeLa細胞内のG4結合タンパク質を網羅的に解析した結果、hnRNPファミリータンパク質などのこれまでに明らかになっているG4結合タンパク質だけでなく、新たにFibrillarinが見出された。Fibrillarinは主に核小体に存在するタンパク質として知られており、核小体は膜がない細胞小器官として知られている。これらの知見より、今回の研究により開発された手法と新たに見出されたG4結合タンパク質は、G4結合タンパク質によって形成される凝集体の形成機構の解明に大きく貢献できると考えられる。
1: 当初の計画以上に進展している
本研究の最終的な目的である、G4RNAとその結合タンパク質によって形成される凝集体の形成機構と機能の解明のために、1年目ではG4に結合するタンパク質を解析するための新たな手法の開発を研究協力者の東北大学の佐藤伸一助教らと共にした結果、これまでに我々の研究のよって見出されたG4結合タンパク質であるTransocated in liposarcoma(TLS)/ Fused in sarcoma(FUS)やEwing’s sarcoma(EWS)以外に、Fibrillarinを新規G4結合タンパク質として見出した(Chem. Comm. 56, 11641-11644, 2020)。さらに、TLS/FUSやEWSと同じファミリータンパク質であるTATA-binding protein associated factor 15(TAF15)もG4RNAとしてその核酸結合性を明らかにしており、G4RNAと共に液滴を形成することを報告した(日本化学会第101春季年会)。また、これらのG4結合タンパク質内に保存されている核酸結合領域の1つとして、アルギニンーグリシンーグリシン繰り返し領域(RGG領域)があり、G4結合性と液滴形成の両方の機構に重要であることがわかった。RGG領域は多くの核酸結合タンパク質の中に進化的に保存されているだけでなく、アルツハイマー病や筋萎縮性側索硬化症(ALS)、前頭側頭型認知症(FTD)などの疾患の原因のなる、タンパク質と核酸からなる複合体中にもRGG領域を含む核酸結合タンパク質が多く含まれていることが知られている。よって、本研究によって明らかになっている液滴を形成するG4とG4結合タンパク質の反応機構は、これら疾患の機構を明らかにする上で重要であると考えられる。
本研究では、G4RNAとG4RNA結合タンパク質によって形成される凝集体の形成機構と機能の解明のために、1年目は新規G4結合タンパク質を見出すための新たな手法を研究協力者の東北大学の佐藤伸一助教らと共に開発して、Fibrillarinを同定した。さらに、TAF15もG4RNAとしてその核酸結合性を明らかにしており、G4RNAと共に液滴を形成することを報告した。これらの結果を踏まえて2年目は、TAF15だけでなく、これまでに明らかにしたG4RNA結合タンパク質であるTLS/FUS、EWS、FibrillarinのG4依存的な液滴形成機構を明らかにする。また、これらのタンパク質中にはRGG領域が共通して存在しており、これらの領域内の特にアルギニンが細胞内で修飾されることが知られている。そこで、このアミノ酸の修飾と液滴形成との間にどのような関係性があるか詳細に解析する。これらの知見は、RGG領域を含む核酸結合タンパク質と核酸からなる液滴の形成機構解明に大きく貢献できるだけでなく、アルツハイマー病やALS、FTDの機構解明や治療法の開発にも貢献できると期待できる。さらに、G4RNAとG4RNA結合タンパク質によって形成される液滴に機能解明を目指す。これまでに我々が見出したG4結合タンパク質であるTLS/FUSは、テロメアにおけるヒストン修飾を制御することを見出している。また、G4RNAもまたヒストン修飾を制御する1つであることがわかっている。すなわち、G4RNAとG4RNA結合タンパク質によって形成される液滴は、ヒストン修飾を制御する可能性がある。よって、この仮説の検証を行う。これらの結果は、上記の疾患に加えて、ガンなどの機構解明や治療法の開発にも貢献できると考えられる。
すべて 2021 2020 その他
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (3件) 備考 (1件)
Chem. Comm.
巻: 56 ページ: 11641-11644
10.1039/D0CC02571B
Biochem. Biophys. Res. Commun.
巻: 513 ページ: 39-44
10.1016/j.bbrc.2020.02.178
RSC Adv.
巻: 10 ページ: 29373-29377
10.1039/D0RA06554D
Nucleic Acids Res.
巻: 48 ページ: 7041-7051
10.1093/nar/gkaa505
https://wwp.shizuoka.ac.jp/oyoshilaboratory/