研究実績の概要 |
本研究では、グアニン豊富なRNAが形成するグアニン四重鎖(G4)RNAとG4結合タンパク質によって形成される凝集体の形成機構とその機能の解明を目的とした。まずG4結合タンパク質を明らかにするために、G4に結合するタンパク質の網羅的に解析するための手法の開発を東北大学の佐藤伸一助教らと共に開発した。この手法により、新たにG4結合タンパク質としてFibrillarinが見出された(Chem. Comm., 56, 11641-11644, 2020)。 また、凝集体の形成に関与していることが報告されているG4結合タンパク質であるTLS/FUSのG4結合性とメチル化修飾との関係を解析した。その結果、TLS/FUSのG4結合性は、TLS/FUS中のアルギニン残基が受けるメチル化修飾により制御されていることがわかった。現在、これらの結果は論文投稿準備中である。これらの知見は、さまざまな疾患に関与するタンパク質のG4依存的な凝集体の形成機構の解明につながる。 また、タンパク質の凝集体形成機構を解明するために、モデル分子としてウシ血清アルブミン(BSA)用いて、pH依存的ゲル化形成能の解析を明治薬科大学の山中正道教授らと共に行った。その結果、pHが低下するとBSA内のαヘリックス含有量が減少することでBSAがゲル化することがわかった(Chem. Pharm. Bull., 71, 229-233, 2023)。これらの結果は、疾患に関与するタンパク質のゲル化機構を解明するのに重要な知見である。 さらに、TLS/FUS中のG4結合領域であるRGG領域を利用して、G4を形成するプロモーターを標的とした転写抑制因子の開発にも成功した(ACS Omega, 8, 10459-10465, 2023)。この分子は、G4が関与するガンや筋萎縮性側索硬化症などの疾患の機構解明に役立つと期待できる。
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