研究課題/領域番号 |
20K05709
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
竹田 浩之 愛媛大学, プロテオサイエンスセンター, 准教授 (40609393)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | イオンチャネル / 脂質平面膜電位測定技術 / 無細胞膜タンパク質合成技術 / プロテインアレイ |
研究実績の概要 |
コムギ無細胞タンパク質合成系(コムギ無細胞系)と脂質平面膜法を用いたイオンチャネル活性評価法をブラッシュアップするため、いくつかのチャネルを用いて検討を進めた。まずカリウムチャネルの検討のために、Trekなど3種類のK2PチャネルとhERGなど5種類のKvチャネルを無細胞合成した。無細胞合成で得られたプロテオリポソームのチャネル活性をOrbit miniを用いた脂質平面膜で評価したところ、全てのチャネル試料で電流シグナルが計測された。KCNK2の測定では膜電位の大きさに応じた電流値が計測され、電位依存的に開口したことが示された。KCNK2は電位依存的な開口以外に、温度感受性を持つこと、ホウ素により阻害されることが知られている。25℃と37℃の温度条件下で測定をおこなったところ、37℃でより大きな電流値が計測された。また、KCNK2の測定系に10mMのホウ素を添加したところ、電流シグナルが消失した。これらの結果は無細胞合成したKCNK2が機能を保持していることを示している。 別の種類のイオンチャネルとして、カルシウムチャネルについても合成と活性評価を試みた。ヒトおよびマウスCACNA1S(Cav1.1)を無細胞合成した。これらは24回膜貫通ヘリックスを持つ巨大な膜蛋白質であるが、良好に合成が確認された。脂質平面膜法で測定したところ、散発的な電流シグナルは計測されたものの、シグナルの振幅が不規則でスパイク状であった。カリウムチャネルに比べてシグナルの形状や振幅が安定しなかったことから、チャネルの脂質膜へのインテグレーションが不安定である可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
カリウムチャネルを用いた検討が予定通り進み、無細胞合成したチャネルが、コンダクタンス、温度感受性、阻害剤への感受性などの特徴を保持していることが確認できた。一方で、カルシウムチャネルについては活性評価系に課題が残ったものの、無細胞系で良好に合成されたことが確認できた。これらの検討において、2 - 24回膜貫通ヘリックスを持つ多様なチャネルが良好に合成できたことから、イオンチャネルを揃えたチャネルアレイの作製が可能であると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
膜貫通回数や種類の異なる複数のチャネルの合成が確認できたことから、イオンチャネルアレイの構築が可能であると判断した。我々は現時点で230種類ほどのイオンチャネルと調節サブユニットの遺伝子を収集している。これらのチャネル遺伝子を用いて、チャネルを無細胞合成する。無細胞合成したチャネルの発現と活性を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナの影響で旅費を使用しなかった。使用しなかった旅費は次年度に行う予定の実験の消耗品購入などに充てた。残額は次年度の実験の消耗品の購入に用い、研究を加速する計画である。
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