研究課題/領域番号 |
20K05710
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研究機関 | 秋田県立大学 |
研究代表者 |
尾崎 紀昭 秋田県立大学, 生物資源科学部, 准教授 (50468120)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | イネ / ケイ酸 / シリカ / 脂質輸送タンパク質 / 長鎖ポリアミン / ポリアミン |
研究実績の概要 |
イネはケイ酸を根から取り込み、地上部の葉身や籾 などにシリカ(ケイ酸体)を形成することで、様々な環境ストレスから植物体を物理的に防御している。しかし、高等植物のシリカ形成の分子メカニズムには不明な点が多く、穀物の安定的生 を維持するためには早急な解明が必要である。シリカ形成の鍵となる有機マトリックスの一つは長鎖ポリアミン(LCPA)であり、シリカを形成する珪藻、海綿、細菌でのみ報告されている。 これまでケイ酸集積植物であるイネ科を含む高等植物ではLCPAの存在は未報告であった。 そこで、本研究ではイネの機動細胞のケイ酸体から発見したLCPA 様分子を同定し、ケイ酸重合活性との関連を明らかにし、ケイ酸体内部に含まれている脂質輸送タンパク質(LTP)との相互作用解析を行うことを計画した。 本年度は新型コロナ肺炎の影響を受け、解析に十分な量の試料(シリカ)を得ることが困難であった。その代わり、葉身シリカに含まれているLTPタンパク質を精米からも得ることに成功した。イネLCPAの単離は十分に行うことができなかったが、本研究室において簡便で再現性の高いケイ酸重合活性検定系を確立することができた。 またイネ葉身の透過型電子顕微鏡解析を行うことにも成功し、シリカ形成細胞(機動細胞)における非晶質シリカの形成過程を追跡することが可能になった。特にシリカ形成初期過程において有機マトリックスの存在(出現)が重要であることを可視的に示すことができた。2022年度はこれらの電子顕微鏡観察、ケイ酸重合活性検定系およびLTPタンパク質を用いて、イネに存在するLCPAの同定と機能解析を実施することを最終的な目標とする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナ肺炎等の影響で、最も重要な出穂期における試料サンプリングを十分に行うことができなかった。また、学外への出張が一部制限され、解析を依頼している研究協力者との連携が充分にできなかった。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度であることから、試料入手(イネ・シリカの大量単離)を万全にし、十分な量のLCPAを抽出後、ただちに研究協力者のもとでLCPAの同定作業を実施する。万が一、試料が入手できない状況になった際には、細菌由来LCPAを所持している研究協力者にその譲渡を依頼する。 以上の推進方策に際し、新型コロナ肺炎感染状況を予測して、試料サンプリング機会を複数回設定するとともに、オンラインミーティングなどを利用して研究協力者との連携をこれまで以上に密にし、LCPAの機能解析が行えるようにする。 また、昨年度確立した透過型電子顕微鏡を用いたイネの葉身におけるケイ酸体形成、特にシリカ形成の初期過程において有機マトリックスの詳細な解析(免疫組織化学)を行うことを予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定したいた学会発表(バイオミネラリゼーションワークショップ、千葉県で開催予定)がオンライン開催となり、旅費計画分(73248円分)が、次年度分へと繰り越しとなった。この分は2022年度の物品費または旅費(研究協力者との面会)として使用する予定である。
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